足蹴

さながら枕詞が如く。迫りくる視察、とあれば下句は、ともに見聞を深めん、となるべきはずが、旨いもんでも、と相手。それも、贅沢は敵、を信条とするあの会派にあって。当人曰く、私とは八年ぶりの同班とか。

当時、机を並べし委員会。所属は違えども互いに会派を背負うエース同士、とエールを送ったつもりが。一緒にせんでくれ、と示される拒否反応。おい、無礼者、こちとら曲がりなりにも最大会派の団長の身にあって、そんな失礼な物言いがあるかっ。足蹴にされた記憶しかないのだけれども、対する相手や。

当選まもなき中にあって他会派から寄せられる野次に「怯むことなく」との私の一言が背中を押した場面があったらしく。んな善人ぶった行為に及ぶなどにわかに信じがたくも相手がそう証言する以上は。同班での視察を終えた。

こちとて慣れとるだけに出張先の一人メシとて一向に構わぬも夕食は「全員で」というのが規則、というか慣例となっており。んな時こそ問われる社交性。普段は見えぬ素顔が見えたりもするもので。戒律厳しき村の中にあって求められるは節度。多会派との二次会などもってのほか、孤高を貫く中にこそ政党の美学が。と言いつつも彼らも人の子。

話題を選ばんとするに「健康」こそ政党問わぬ万人の願い。私も所属する役所のラン部にでも、と水向けるに、走るは不得手にあらず、されど、過去に膝を負傷して以降は山歩きが趣味と。格の違いを見せつけるべくこの夏に標高三千米のレース完走を自慢げに語らば、私もかつて五千米に、と先方。おい、ウソをつくな、日本一の山の高さを御存じか。いや、もしや。

若かりし頃に友人らとヒッチハイクにて南アフリカを横断、途中、現地の山岳レースに出場。走り下るに衝撃が過ぎて。挑んだ山がケニア山とか。中東情勢から本市の水素戦略まで話題は多岐に及び。やはりエース同士、違うか。隣部屋のM団長。いい人です。

明日は運動会ゆえ忘れずに、との親切心。久々の着信に聞くE子さんの近況。役員に名を連ねる以上、毎週の会合に。長時間にわたる議論は夕刻にまで及び、会議室の利用は午後五時まで、と警告が如き一枚が新たに貼られたそうで。

とにかく長いのよ、と。老境に入るにそのへんの分別、人の機微に疎いとは何とも惜しく。余計に頑固に、他人に譲歩するは恥、とばかり。船頭多くして船山に登り。世に敬われるべき年配者の真の姿を見てもらいたい、と。が、世に賢きは女性。言わぬが花、とばかり、そんな様子をはたで見ながら。整形外科の予約と称して定時に退散されるそうで。

それにしても目下、不便この上なきはタクシー不足。外出前ならばまだ何とか迎え頼めるものの、帰りの便がつかまらぬ。大病院ならば出待ちあれども、診療所、町医者の類とならば受付に呼んで貰わねばならず。高齢者の足の話題の白タク解禁は。

(令和5年10月31日/2814回)