信号

万一に備えて匿名性を保つ、というのが賢い選択と知るも、およそ相手に察しがついてこそ。調印から二年、既に現役を退きし二人に対して、向こうは現職の市長。今以て招かれるはよほど。

全国市議会議長会なる団体があって、当時の会長選考を巡る一幕。そこまでの過程とて紆余曲折に秘話あれどそれは棺桶まで。そう、迎えた最終局面、満場一致で横浜市が選出される見込みが突如。我こそが改革者也、討ち死に覚悟で決戦に臨まんと立候補を表明されて。てんやわんやの大騒動。

所詮は対岸の火事、知らぬ存ぜぬと逃げんとするに降りかかる火の粉。当事者同士の交渉は破局の目もあり、政令市の好、緩衝役としておぬしに。いや、何も本市にあらずとも相模原とて。なに、議長が辞職?この肝心な時に。ということで、説得に何度現地に足を運んだことか。何せ既に内定している人事を覆さんと自ら手を上げるような変人。当時、示された条件の一つが職員の派遣。それも費用は派遣側の負担。つまり派遣される側、横浜市にとってはタダで。

人口数万人の御当地にとっては安からぬ負担なれど、必ずやわが市の為に、との本人の想い。あれから二年、当時の議長から市長への転身を図られ。その期間を更に延長されるとか。変人にはそちらが向いとるとは言わなんだが。水を得た魚が如く辣腕を振るっておられる様子にて。

さて、四年に一度の海外視察の年。意向調査に「不参加」との回答寄せるに他会派から。最大会派にあって一枚岩にあらずとはこれいかに。いや、こちとて何も趣旨に反対するものに非ず。むしろ為替相場に物価高なる状況下にあって大幅増額すべしと声高々に公言しとるのだから逆賊呼ばわりは甚だ心外。容認派どころか積極的推進派にあって内政干渉もいいところ。批判を押さえんと画策する行為自体が負い目の証拠だったりもして。

全会派の合意を得たはずが、批判を寄せる、それもタウン紙などに堂々と投稿寄せる奇人ありて。言語道断、紛糾すれど、所詮は言ったもん勝ち、やったもん勝ち。その後の処分は耳にすることなく。以降、猜疑心だけ増幅されて迎えた今年。行かぬ人も批判せぬようにとの踏み絵というか、未だそんな確認を。そう、賛同したとは申せ、昨今の世情を見るに、というのが本音に近いところか。会派によっては派遣の人数を絞ってみたり、村の総意として不参加を決め込む中に無言貫いてこそ信義と。

いや、行かねば損、などと野暮になく。不参加とあらばそれだけの費用が「浮く」訳でそれを手柄とばかり善人ぶるつもりとて。ただ行かずと許されるならば、ってだけの話。そっとしておいて下されば何ら。弾圧されるに抵抗してみたくもなるが人の心理。不参加の意思表明に何もそこまで、というのが。

赤信号みなで渡れば怖くない的な発想の最たるもので。赤信号を渡るに咎めはせぬ。されど、何も好んで他人を巻き込まずとも。いや、あくまでもたとえ話、信号は守るに限る。自らは見て見ぬフリなれど他人の行為は見逃せぬ、とは何ともさもしい面々にあるまいか、と言いたいだけで。

(令和6月5月25日/2855回)