一刀
押しつけがましく御迷惑よね、と気遣い見せるは奥様なれど。心配は御無用、ただ、その量が読むに追いつかぬだけで。聞かば家の一部屋が本の山とか。以来、届けられし本の束や歴史モノ多く。目下、手にするは「剣豪将軍義輝(宮本昌孝著)」全三巻。
世に最強を巡る話や尽きず。イチオシの拝一刀や実在ならずも、忍びの里に一刀の名が付きし大岩見れば柳生石舟斎こそが最強と。いやいや、その上にもう一人。不敗の秘剣「一ノ太刀」有する塚原卜伝こそ。
将軍家とて十代も続かば。武門の棟梁たるもの刀を捨つるが凋落の元凶、と諭され。若き日の義輝が教えを請わんと霞新十郎に扮して向かう先や卜伝翁の常陸国なれど、道中、立ち寄りし美濃国にて邂逅を果たすはその人。
家督を譲りて隠居の身とはいえ一介の油売りから立身図りし道三と、かたや、生まれながらにして身分を保証された義輝が心通わせる場面が何とも。事実ならずとも事実ならざるゆえに描けるが利点。それこそが小説家の小説家たるゆえんであり。まさに虚実皮膜にこそ学ぶべきものが。
さて、現実の話。予算審査特別委員会にて苦言を呈するはパブコメのみならず。その一つに高校の無償化あり。そもそもに学費が違うのだからさもありなん。空調すらまともに動かぬ公立に対して快適な環境が整えられし私立。教育に垣根なし、出自如何に関わらず教育を施さばいつかきっと。たとえ薄給であろうとも彼らの為にわが人生を、なんて先生も今や。
所得の撤廃のみならず、公私の垣根まで取り払われるに押し寄せる淘汰の波。とするに、出願の動向やいかに。そして、無償化の名の下に全て御上が面倒を見てくれるのであれば授業料とて。本市とて五つの高校を有するに憂えるはその行末。
そして、その学歴こそが良家の子女の証だったはず。そこに越えれぬ一線、というか境遇に応じた居場所が用意されていたはずも当然の権利と押し入るは果たして。そう、んな不平等が未だまかり通るがその世界。いや、不平等などと言わせぬ。料金に差があって何が悪い、どころか、払わば誰でも、とならぬところにこそ。ということで、本場からの逸話を一つ。
時は第二次大戦。戦禍にあって標的とされるはそちら。名門ゴルフ場を演習場に拠出せよ、との軍の命令に時の陸軍大臣に詰め寄りて申すは、レンブラントの名画に泥を投げんとする愚行、と。その圧巻の迫力に「わかった」と撤回せしめた狂ぶり。
名門貴族に生まれしブラバゾン卿の回顧録によれば。わが人生を顧みて最も多くの喜びと教訓を与えてくれたのがゴルフであり。上下院はじめ数多くの要職を歴任する中にあってP&G主将とPGA会長こそが双璧。そう、いづれもゴルフにまつわる役職であり。
んな当人、72歳にして訪れた人生初のエイジシュートのチャンス。あと一打の短きパットを外してもらした一言。「分相応なり」と。
(令和8年3月15日/2983回)
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