別荘

大学生の息子がGWに明け暮れるは遊びならぬバイト。「明け暮れる」は些か語弊か、何せ本人の意思というよりも雇主側の都合。そう、他の学生が郷里への帰省やら遊びやらの空き埋めるべく、店長から請われるがままに。他人の尻拭いなんぞ、んなおひとよしでどうする、と妻に責め立てられるも。学歴よりも人柄に勝るものなし、何せ親が親ゆえ。

割高な上にあの渋滞と混雑、何を好んで遠出など。ランのシューズと本さえあれば。が、んな時に限っての誘いも拒む理由なく。ラウンドに終らずその後まで。どうせ家では「戦力外」なのだから、との相棒の運転にて向かう先や。相模湾を一望する高台に購入された中古物件を改装されて生まれ変わるは別荘。全て自ら、と語る家主や開業医。

奥様に手料理をふるまっていただき。旨い肉とワインを片手に夫妻の御相手を。抜栓後に部屋内に立ち込める芳醇な香や逸品に違いなく。せめて一口、と欲すれども車の運転あらば。いっそ泊まっていけば、と主人。その天真爛漫な性格に魅了され。話題尽きず、深夜まで。帰り際、夢の別荘は未だ「未完成」と聞くに、一飯の恩は高台への資材運びにて返しますゆえ、と。

そう、GWに休みなきは息子のみならず。まずは地盤固めを、と駅頭に余念なき新人から加勢の依頼。こちとら別荘にアルテリッカと追われるも開演までの間でよければ、と。

思い返すは衆院選。出陣式を事務所ならぬ駅前にて催すは耳目を惹かんが為。必勝祈願と用意されるだるまの大きさに気迫が窺い知れるも候補本人が手に持つは筆ならぬサインペンであり。せめて筆ペン位は。陣営の誰もが咎めず咎められず。んな様子をSNSにて自ら拡散するは墓穴掘るようなもの。が、今にして思わば、それすらも計算内だったのではあるまいか。

ポスターとて写真に氏名は言わずもがな。学歴こそが当人にとってのアピールポイントらしくも、それは口コミでじわり伝わるが理想。ましてや校名のみならず「医卒」などと太字大文字で記すはかえって。当選一期のK県議なんぞも似たものなれど、そちらは「夜間」と。そもそもにそのセンスやいかに、と懐疑的に見ていた私。が、勝てば官軍、あれこそが非凡な証左であり。

そう、駅頭にて耳打ち。市のインフラ整備において国の補助金の増額が見込めるとか、そこに一肌脱ぐゆえ先生の手柄に、と代議士。ふむ、私の為に、とはありがたいが、心配は無用。むしろ、おぬし自らの手柄、いや、本市の為となるならば手柄を抜きにやるべし、と。

当選一期は地盤固め、とは巷間言われることなれど、駅頭のみならず霞が関との折衝まで二役こなすはやはりモノが違うのかも。

(令和8年5月10日/2994回)