草の根
あるセンセイの細君によれば「視察」は「旅行」と同義語とか。私なんぞも出張の際に行先は告げぬ、というか聞かれもしないんだけど「外泊」=「視察」と解釈されているらしく。奥方がその程度の認識なのだから巷ともなれば...。キチンと事情を説明したはずなんだけど、当人からの紹介先は蔵王温泉T旅館。「いやいや視察だから」と再度伝えても「御当地は観光で行くところにて」とにべもない。紹介者は誰なんだって?そりゃ御当地出身の...市のOB。
さて、本市の姉妹都市・友好都市といえば締結順にリエカ市、ボルティモア市、瀋陽市、ウーロンゴン市、シェフィールド市、ザルツブルグ市、リューベック市、ダナン市、富川市で、国内は中標津町、富士見町、那覇市。中にはザルツブルグ市のように発展を遂げたものもあるものの牧歌的な時代の名残か平成8年度以降はとんと進展を見ぬ姉妹都市。今国会では休眠預金活用の法案成立が目指されるというけれども一向に往来が無い状況にあってまさに「休眠」状態の市も...。
かと思えば、私なんかもその交流に一役買ったと自負してやまない一つに島根県益田市との交流があって、同市とは主に子供のスポーツを通じた交流が進み、数年前に両市で覚書を締結。姉妹都市ではないけれどもよほど交流がさかん。やはり「行政が独善的に進めるのではなく、草の根でなければ長続きはしない」とは今回の視察先の市長。秋といえば芋煮の季節、集団就職で上京して以来数十年。市内随所で行われる芋煮会に郷愁に誘われる人も少なくないはず。
山形県長井市。人口3万人にも満たない同市は芭蕉の句で有名な最上川の上流に位置し、かつては米沢藩の支配下。米沢といえば江戸時代屈指の名君として誉れ高い上杉鷹山公。全国を見渡せば俸禄が重荷にて家臣を手放す領主を横目に質素倹約を推奨して領地返上寸前の藩財政を救った鷹山公は今も高い人気を誇る。「なせば成る、なさねば成らぬ何事も」の人。
そんな長井市と本市は古くから草の根交流があるらしく現在も市民まつりに出店。区民祭へも出店していることからとりわけ多摩区とは縁が深いとか。そんな長井市では市長自ら丁重に迎えていただいて意見交換を終えた。また、御当地の案内をいただいた中に地元の名産、鯉の養殖が含まれる。川魚だけに「鯉なんて...」と見下されがちだが、地元民にとって鯉こそは慶事に欠かせぬ縁起物。かくいう私の祖母の好物は鯉の味噌汁なんだけど、当時、貴重なたんぱく源として鯉の養殖を推奨したのが鷹山公だとか...。
そう、今回は県庁所在地の山形市の視察も含まれる。戦時中の空襲が無かったことから歴史的建造物が多く残り、レトロな街並みが残る。そんな山形市ともスキー教室を機に草の根の交流が進み、本市とは災害時における相互援助協定の第一号にて過去には除雪作業等で本市が協力するなどの援助が行われてきた。そんな両市の交流の歴史に詳しいのがT旅館の会長御夫妻だそうで。当日は草履番ならぬ会長御夫妻が直々に出迎えて下さった。
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