野沢温泉

越乃寒梅よりも獺祭。それはあくまでも嗜好によるもので優劣を付けるものではないんだろうけど、宿泊においては老舗旅館よりも趣向を凝らしたリゾートホテルが贔屓となる。伝統や格式はなくとも老舗に負けじと御客様に満足されるサービスを追求する挑戦心は体験しておいて損はない。中でもとりわけ「湖畔」が好きで、山水の注ぐ湖畔や秋景色と詠んだ。
ナウマンゾウの化石が発掘されたことで知られているんだけど新潟県と長野県の県境に野尻湖という湖があって、悠久の歴史に想いを馳せながら大自然の中で...ということで湖畔のホテルが宿泊先となった。それにしても新進気鋭のシェフによるコース料理の中でも低温調理による信州牛のローストと小布施の赤ワインの組み合わせが抜群に旨かったナ。えっ、家族?そりゃ内緒だよ内緒。
そう、父の仕事の関係で新潟県と長野県を往復していたんだけど、幼少の頃を過ごした一つに長野県飯山市があって、翌日は数十年ぶりに御当地を訪ねた。両脇に山を挟んだ中を滔々と流れる千曲川に当時の思い出が浮かんでくる。
当時の幼稚園は「しんしゅうじ学園」っていうんだけれどども確かこのへんに...あった。今は飯山中央幼稚園になっているものの隣にはやっぱり真宗寺って寺があって園庭では子供たちが元気に遊んでいる。そうそう、当時はT洋服店の次男坊が遊び仲間で彼の自宅にもよく遊びに行ったもんだからそちらも...あった、あった。懐かしいナ。
そんな当時の思い出の一つに野沢温泉があってこれが昔ながらの情緒の残る温泉街にて家族旅行の定番だったんだけど、折角の機会だけに...と足を延ばした。兎にも角にも湯が熱いのがこの温泉の特徴で複数の共同浴場があるんだけどその源泉となる麻釜(おがま)を訪ねて神社を参拝。さすがに平日の昼間とあっては観光客もまばら。みやげ物屋の軒先に温泉たまごを見つけて注文すれば奥へどうぞと店主。
ここの温泉たまごは日本一のこだわりがあって...と絶好の話し相手とばかりに饒舌を御披露いただいた。こちらが数十年ぶりと伝えれば「そうそう当時は浴衣に下駄を鳴らして観光客がわんさかいたけど今じゃ土日だって閑古鳥よ、冬はシーズンだが、平日なんかはスキー場に人が居ないからプライベートゲレンデみたいなもんだ」と。そんな閑古鳥の原因も本人なりに分析されていてその分析を興味深く聞いた。なるほどナ。
「まぁ、彼らが来ないのが幸いだな、だって、ヤツら旅館の薄型テレビを荷物に入れて持って帰っちゃうっていうじゃねぇか」。う~ん、確かにあるかも...。まぁそんな雑談も含めて60円の温泉たまご一個で随分とレクチャーをいただいた。というよりも店主が...失礼。こだわりの温泉たまごは旨かった。