往復書簡

最近の朝刊に市内某所で選挙ポスターへの落書きで犯人が逮捕されたとの記事を目にした。そんな形でしか不満をぶつけられないとは何とも稚拙だが、逮捕された容疑者の年齢70歳だそうで。ふ~む。
この春から支援者の一人が介護施設に入居されていて、退屈が過ぎてはボケに繋がりかねぬと冷やかし方々訪ねれば要らぬ心配だったことに気付かされる。既に卒寿を過ぎた御婦人なんだけど何ともいい表情をされていて当人の生き様が顔に...なんてのはあながち間違いではないかも。それにしても口も達者だったナ。
数で白黒をつけようなんて台詞はカッコがいいけど、(多数)決は時に遺恨を生むから慎重に判断すべしとおらがセンセイに教わって久しい。こじれた関係の修復は困難を極めるから意図的に曖昧若しくは逃げ道を用意しておいたほうが都合のいいこともありそうで。そりゃ確かに不運としか言いようがないこともあるんだろうけど、落書きに限らず社会に怨念を抱く方々、つまりは責任を他に転嫁したい方々というのはどこにでもいるもので、国民の善意を信じた首相の決断は裏目となった。
離脱か残留か、英国の国民投票の大勢が判明する前に市場が大きく反応。大幅な株価下落はアベノミクスの失敗だなんて批判している御仁も見かけたけど上が転覆してくれさえすればってのは無責任。「売り手」と「買い手」における情報格差、つまりは情報の非対称性は市場に限らずこちらも同じ。そんな情報格差もあれば、一部の過激な活動家が「情」に訴えて冷静な判断を失わせ、自らの躍進を狙った政治家の野望も交錯して...。
そんな抑止効果としての間接民主主義、つまりは議会制民主主義でもあるんだけど、今回の国民投票の代償はあまりにも大きすぎる。自ら残留を支持した以上、逆の結果は新たなリーダーの下でとの判断にその椅子を虎視眈々と狙っていたはずの有力候補の不出馬。ボロが出て釈明に追われる離脱派の首謀者にスコットランドの残留表明とどうなる英国。
平和と発展の為に小異を捨てて大同にと国家の枠組みを超越した機関が創設されて久しく、歴史的な命題を克服すべく果敢に挑んできた経緯は読者諸賢の知る通り。が、組織に属せば自由を制限される不都合なこともある訳で、そこに不満が生まれるのは必然なんだけど、そんな機関の一つ、国連の前身となる国際連盟が当時ひとつの問いを投げかけた。
「今の文明で最も大切な事柄を取り上げ、一番意見を交換したい相手と書簡を交わして欲しい」と。その依頼先はかの天才アインシュタイン、彼が選んだ相手は心理学者フロイト、取り上げたテーマは「人はなぜ戦争をするのか?」だそうでその往復書簡が今も残るという。フロイトによればそもそもに人間から攻撃性を取り除くのは困難であって、その欲動を抑えるには戦争とは違うはけ口として文化の発展が理想ではないかと。が、一方で、文化の発展は人間の性的な機能を損なわせる危険性を有するとして少子化を挙げた。