白川郷

気まぐれな御仁の突然の電話に何ら義理はないものの、夜の一席を付き合うことになった。久方ぶりの対面に話題は多岐に及ぶ。大学時代の同級生なのだが、私以上の田舎の御出身にて話が夏の同窓会に及んだ。
二次会、三次会、更に...。ともに机を並べた教室の思い出は尽きずとも財布の中身は続く訳ではないから会費は3千円が限度。足が出た分は割り勘ならぬ押し付け合いですったもんだの挙句、田舎の身分に応じて...。パチンコ店のせがれが5(万円)、医者の御子息が3、そして、気まぐれな御仁が残りの1の負担となったものの不満な様子。そもそもに1ヶ月も休暇を取得して世界を漫遊するだけの金銭的な余裕があって、それもこれも彼らのおかげで今の地位に繋がっているのだから10を出してもバチは当たらんぞと諭した。
そんな当人は七大陸最高峰の制覇を四十代の目標に掲げて、この夏にはキリマンジャロの登頂を果たしたばかり。が、果たしたといってもそれは相当に悲惨なものだったらしく最後はシェルパに抱きかかえられての到達にもう二度とせぬとか。さりとて、未知の領域に挑戦したいとの欲望は捨てきれぬらしく、壮大な目標を撤回して転向する先は...フルマラソン。それでは私と変わらんではないか。今以て「何が面白いのか?」って聞かれるんだけど、そりゃやってみた人にしか分かんないものがあるんだよナ。
そうそう、「高低差1千m以上」の白山白川郷ウルトラマラソン50kmの完走を遂げた。御当地の白山比咩神社は霊峰白山を御神体山と仰ぐ全国白山神社の総本宮にて当日の開会式ではそちらの宮司による完走祈願の祓いが含まれる。前半戦は神様の御加護に守られた大自然に癒され、後半は合掌造りで有名な世界遺産「白川郷」を駆け抜ける贅沢なコースにて後は体力が続けば...。大会には2つのコース「極みの100km」と「悦びの50km」があって私以外の塾仲間3名は「極み」を選択。そちらは「悦び」の往復だけに1千mの高低差を二度繰り返す国内屈指の超絶ハードコースでスタートは朝4時(ちなみに「悦び」コースのスタートは7時)。
最近のマラソン大会は女性の参加者も多いせいか(今回は女性比率3割)、ファッション性が高い。その一因は大会のオリジナルTシャツ。一見そんなTシャツを着ているだけで何やら完走を遂げたかのように見えなくもないんだけど、そりゃあくまでも参加賞であって完走を遂げずともエントリー代だけ払えば入手可能。が、こちらのものだけは完走を遂げねば手に入らぬらしく、途中すれ違ったランナー、つまりは「極み」への出場者が着ていたその御当地Tシャツがカッコよくてね。100km13時間を10回クリアすると与えられる称号をサロマンブルーと呼ぶらしく、これで次回の挑戦は...。
そう、当日の夜にマラソン中のランナーをスズメバチが襲ったニュースが流れて、おらが後援会長からも心配の御電話をいただいたけどあれは隣の市の大会。こちらは幸か不幸か筋肉痛「のみ」にて一泊滞在の上、翌朝は始発「かがやき1号」で登庁。最近はまたそちらのほうが騒がしいけど自腹にてあしからず。
(平成28年9月18日/2290回)