夢櫻

どうせ勘定はそちらになってしまうのだから親孝行などと言えたもんではないんだけど食事会にて母の贔屓の店に顔を出した。本来、そちらに目がいくことは少ないんだけれども器も上品で旨いもんを愉しませてくれる。以前はそれほどでもなかったはずが、最近は予約もなかなか取れずに久々の一席に舌鼓を打っていれば、「実は長年の御愛顧いただいたのですが...」と店主。
閑古鳥ではあるまいに「はて?」と聞けばオーナーの都合から退去せざるを得ないとか。それにしても月末とは随分急だナ。いつもは料理ばかりでそんな話をする機会も無かったんだけど、愛娘の誕生とともに開店した店なだけに特別な想いがあるようで...。こちらの前は銀座でやってたとか。うん、こりゃ通用するよ。腕は裏切らぬからまたいづれどこぞに出店の際にはぜひ一報を...と連絡先を残した。
さて、「深夜特急」で有名な沢木耕太郎氏に「馬車は走る」というノンフィクションがあって、若き日の石原慎太郎が革新系の美濃部亮吉に挑む都知事選を描いた「シジフォスの四十日」が含まれる。保守分裂となる以上は野党が結集すればそこに勝機が生まれるはずで、野党統一候補の擁立にあたり余計な立候補は辞退するようにとの圧力。当人にすれば相当に忸怩たる想いがあったはずで「野党共闘の”被害者”は語る」との副題がついた宇都宮健児氏のインタビュー記事「鳥越さん、あれじゃあダメですよ」を読んだ。
加害者なんぞは都合のいい勝手な御託を並べるだけで被害者の慟哭の中にこそ学ぶものは少なくない。「野党4党、市民連合の方々に求めたいのは安倍政権が独裁的だと批判し、民主的なやり方を求めるならば自らもまた民主的なやり方を貫かなければならない」と手厳しい。
固定資産税が主な歳入財源となる市町村に対して、法人事業税を主な収入源とする都道府県、ゆえに財政は景気に大きく左右されるんだけどそれでも本社が集中する東京都はダントツ。そんな都と隣接する本市を比べて不満を言われてもダビデがゴリアテに挑む、いや、それはダビデが勝っちゃうから...幕下十両が横綱に挑むようなもの。
まぁそれだけの財源を自らの一存で差配する訳だから権力者には垂涎の的でそれに群がる輩は少なくない。どこぞの代議士だなどとエラそうなことをいっても所詮はその他大勢の一人に過ぎず、それに比べれば一匹狼の都知事は破格の存在。で、話題の豊洲の話になるんだけど、リトマス試験紙と第三者を装った学者風情のコメントに作為的な意図を見てしまうのだが、そのへんの侮れぬ脚本力に教わることは少なくない。
が、知識をひけらかして悦に入るのは勝手にせよ、ならばどうするという肝心なものが抜け落ちている訳で、現実には物事を解決していかねばならず...。工事受注を巡る一連の疑念と移転先の安全基準は別次元の話。「築地」に捨てがたい愛着を抱きつつも苦渋の決断に足並みがそろったのだから...。食の安全を言われれば絶対的なものなどない訳でそれをいうなら築地の衛生面はどうなんだと。まずはそちらを視察してみてはいかがかと。
(平成28年9月26日/2292回)