賽銭箱

ポスターや掲示板といえば支援者宅や当人が所有する不動産物件であることが少なくない。かくいう私の陣営なども後援会長が村中どころか隣村まで回って承諾を取り付けて下さった結果、十分な数を確保しているんだけどそんな後援会長でさえも知り得ぬ場所にポスターが貼ってあった。
泥棒の厄難除けどころか不謹慎で逆にバチがあたりそうな気がしなくもなく。その場所というのが神社の賽銭箱(正確にはその前の格子)。宣伝効果は抜群、それでいて物言いがつかぬのはひとえに氏子の皆様方の御好意か。さすがに見飽きた顔写真こそないものの、イベント告知のポスターにはしっかりと個人名が記されていて。恒例のさんままつりを終えた。
そもそもに東日本大震災の年に被災地復興を兼ねて開催したのが発端で今年で5回目。が、ここまで来るには紆余曲折があった訳で、初回などは事務所前の駐車場で告知をすればありがちな「匿名の」苦情が寄せられてすったもんだの挙句に隣接するおらがセンセイの玄関前の敷地を借りての開催。
これが大好評で見知らぬ通行人までが吸い込まれて、次から次へとサンマが売れる。焼き手もすっかり上機嫌で家主の不在をいいことにドンチャン騒ぎだったもんだから後が大変で...。さすがに御屋敷といえどもそれだけの方が出入りしては些か手狭な上に防犯上も...なんて口実から翌年に白羽の矢を立てたのがこちら。
御伊勢ノ森といわれる高石神社は市内で最も標高が高い神社であって、当時の寄付者の氏名が刻まれた支柱が社を囲み、俳句の句碑が点在することから別名「句碑の森」とも。駐車場も完備されていて雨天時は社務所下の集会場が利用可能にてこれ幸いと打診すれば二つ返事で「結構」と。たとえそれがきっかけであろうともより多くの方々に神社を知っていただければとのことらしく。
が、悩みの種は尽きぬもので次なる課題はサンマの値段。仕入れ原価をケチったせいで小ぶり過ぎては格好がつかん。原価割れせぬ程度に上手く...と依頼しておいたものの、どことなく小ぶりなサンマに一抹の不安。正月の定番、縁起物の高級食材として知られた数の子はニシンの卵。
群来と書いて「くき」と読むんだけど、産卵期にニシンのオスが海中に放出した精子が海面を見事なエメラルドブルーに変え、砂浜に上げられた漁船からこぼれ落ちるほどの豊漁に歓喜する村人の姿も今は昔。かつて栄華を誇ったニシン御殿のニシンそばが外国産とはとんだ笑い話。殿様が好んだ目黒のサンマ、安くて旨い庶民の魚が高級魚として珍重される時代が来るやもしれぬ。それにしても炭火で焼いたサンマってほんと旨いよナ。
賽銭箱ポスターの効果か神社の御利益か、「正午に伺いたいのですが、モノは残っていますか」との問い合わせが寄せられたのは後援会の事務所ならぬ神社の社務所。話題が話題を呼び、口コミ効果で年々客が増えて今年なども例年並みの数量を用意した「小ぶり」の三陸産サンマがものの2時間で完売。来年は仕入れを大幅に...焼き手が大変です、ハイ。
ということで御年始の初詣はどうぞ高石神社に。
(平成28年12月3日/2308回)