片隅

業界団体の中には昼や午後の開催も少なからずあったりするから市役所にて雑務をこなしつつ、途中抜け出して新年会に駆けつけることも...。そんな折に先輩のセンセイの送迎を仰せつかれば車中の雑談などが役に立つことも少なくない。正月の松飾などはてっきり七草に外すもんだと信じていたんだけど、先輩曰く「七日の風に当てるな」、つまりは六日中に下ろすのだとか。
松飾といえば鳶職人、信心深いもんだから変えた途端に厄難に見舞われやしまいかと浮気もせずに地元の鳶の親方Mさんから購入していて。で、外した後の処理となると家庭ごみとして処分なんてのも選択肢の一つなんだろうけど、やはり縁起物だけに一年の無病息災を祈りつつ炊き上げてもらうというのが妥当なところで区内には今もどんど焼きが残る。
せちがらい時代にて年々片隅に追いやられがちな火気使用、金程地区などは大勢の方々が協力して大々的に行われるんだけど、エビの瀬戸物なども全て外して分別する徹底ぶりで、万が一に備えて地元の消防団も待機しているもののそれでもやはり気に食わんのか「匿名の」通報が寄せられて毎年の如く消防車が駆けつける。
匿名通報といえばやはり厄除けで評判の神社は駐車場が手狭にて横の道路に整列駐車されるんだけど今年は初詣の神事途中にパトカーがやってきて...。さすがに警察といえども相手が相手だけに音量を落として注意を促す気遣いが見えた。通報に出動せねば職務上の責任を問われかねないだけに向こうも複雑なんだろうけど。
そんなどんど焼きに持参出来ない方々の為におらが神社には納札所が用意されているものの、境内には別に炉があって時折そちらの白煙を被っている方を目にするんだけどそりゃ古い木札を燃やす厄落としのすすだから神社仏閣でよく見かけるアレとは違う。
さて、遅まきながら友人のN君から賀状が届いた。どう転んでも達筆とはいえぬが、手抜きなく丁寧に書いた形跡は分かるもので当人の性格が垣間見える。まぁこちとら出していないのだから言える筋合いではないんだけど。
老舗ラムネ屋の三代目社長のN君とは妙な縁で元々は大学時代の下宿先の私の隣人が御当地の出身にてその親友がはるばる上京したというのに彼女とのデートがあるからなどと身勝手な言い分で私が世話役を押しつけられたのがそもそものきっかけ。浪人ウン年、学業はからっきしながらも中々見どころのある御仁にて意気投合、以来、私が...。そんな当人も円満な御家庭と子宝にも恵まれ事業も順調な様子にて今ではすっかり立場が逆転してしまった。
そんなN君が活躍する広島県呉市を舞台にした映画「この世界の片隅に」が人気と聞いた。そちらに疎い私にはポスターがあのアニメ映画に重なってしまうのだが、あちらは監督の知名度に主題歌、制作費や宣伝費は圧倒的だから大入り当然にせよ、こちらは草の根の口コミが広まった結果だとか。聞けば川崎市アートセンター、つまりは市の出資法人が運営する劇場で上映中とのことで好都合とばかりに仕事の合間に伺えば大変な混雑具合に「完売」とにべもなく。
となると余計に見たくもなるもので...。御当地を語らせれば郷里の如く話題に事欠かないが、鉄板屋台「あしあと」のお好み焼きは絶品にて。
(平成29年1月14日/2318回)