月光仮面

月光仮面の歌さながらに疾風のように去っては主催者に失礼。団長に途中退席の非を詫びていれば横から「もう帰るのか?」とK兄。訓告というよりも名残惜しさと「勝手に」解釈することとした。そりゃこちとら野次の一つも...いや、大声援を送るのもやぶさかではないけれども慣れぬ声援に動揺されても困る訳で。おらが村の初出場S君が最優秀選手だったと速報に聞いた。やっぱり居なくて良かったナ。そう、消防団の操法大会。
各会派の正副団長が委員となって議会全体の運営を協議する議会運営委員会、いわゆる「議運」。その委員長とあらば議長の隣りってんであれば意味が分からなくもないんだけれどもおらが村の席次では正副団長の並びにあって団長の補佐役的な一面を期待されているらしく...。諸団体から団長宛に届く会合も正副で手分けして粗相のないように出席する、そりゃ副団長の頃に何度か経験はしていたんだけれども此度は正副いづれも都合がつかぬとかでこちらに鉢が回ってきた。
恐れ多くも譲歩に譲歩を重ねて議長の代理なら分からんでもないけど団長の代理などと言われても自己紹介に詰まる。「本日は私どもの団長の某が御挨拶申し上げるべきを代理にて議会運営委員会の委員長が...」では文脈がヘンでしょ。ましてや私の選挙区なんぞは市の最北端にて片道1時間。だったらもっと近いセンセイいるでしょうに。市を南下するってことは東西に延びる私鉄を越えねばならん訳で最短経路の踏切がやはり...。
付近の駅にて人身事故ゆえ迂回したほうがいいと見ず知らずの通行人が教えてくれた。早く複々線化が実現せぬものかと。で、結局は遅刻しての到着だったんだけれどもほんと喜んでいただいてね。主催者の配慮で総会の議事途中で挨拶の機会をいただいた上に司会の機転で途中退席に水を向けて下さったんだけど遠路戻る訳にも参らず...とこちらは居座った。
そう、最近の報道にシベリア抑留の生存者に関するものを見かけたけれども日ソ不可侵条約などどこへやら、どさくさに紛れて強制連行され、筆舌に尽くしがたい隷属的な過去に帰還者の口も一様に重く。そんな大国相手に挑んだ一戦、ダビデとゴリアテが如くに雌雄を決した歴史的快挙を描いた「坂の上の雲」。
著者によれば「無理矢理に近代の曙の中に立たされた日本人にとって悪状況の中から自らを救い出す夢であり、単なる軍事的概念を超越したものだった」と述べておられるんだけれども「ようやく」読み終えた司馬遼太郎著「この国のかたち」最終巻には海軍についての歴史考察があってこれが中々興味深い。
そもそもにその生い立ちを見ればインド洋の貿易を占有していたイスラム商人の商権を奪うべく企図されたのが発端であって、著者の文章を借りれば、「イスラム教徒は元来キリスト教徒に勝る技術文明を持ち、造船、天測、その他航海術においてもヨーロッパの師匠だった。ただ、海軍という専門集団を持たない為に負けた」と。
ならばわが国における海軍はどうであったか、日露戦争時には時代の寵児としてもてはやされた海軍も石炭から石油に、海から空への時代の潮流が読めなかった、いや、気づかなかったというよりも気付かぬフリをして肥大化を許したというのが正しいようで。自らの存在を正当化する為にアレコレ企てるのは軍に限った話ではないけれども負けるべくして負けた戦にあって歴史に学ぶ意義は小さくない。
(平成29年6月9日/2354回)