五種十貫

君子危うきに近寄らず。脇は甘くとも危機管理には長けたはずが逃げるに逃げれぬ局面もある訳で。政治は男女の恋仲のようなものとはMセンセイの知った口ぶりだけど、小学生の集団下校さながらに仲間が一人減り、二人減り、二軒目ならず三軒目に残された男女二人。一人が私でもう一人というのが...。
元総理による説得工作の失敗に終わったあのシーン。干からびたチーズは当人ならではの演出なんだろうけど、旨いもんでも目前にあればとげとげしい話題は避けられるに違いない、などと上ネタ五種十貫を頼んだ私が甘かった。互いに不惑を過ぎた身、何を言おうと余計な節介というもので慰留もせぬが背中も押さぬ、相手が手を付けぬ十貫を「私が」無言で平らげた翌日に肚を固めたとか。氏名が朝刊に踊った早朝に珍しく御隠居のHセンセイから着信があって老婆心を聞いた。
風雲急を告げ、危急存亡の秋。燕雀いずくんぞ鴻鵠の志、座して滅ぶを待つよりより出でて活路を見出さん。反旗を翻すとなれば任侠にも劣らぬ熾烈な神経戦が繰り広げられる訳で、処分甘くば示しがつかず、当然の措置とは知りつつも除名除籍に辞職勧告と物騒な文言が並ぶ。同調者が出ぬようにと反逆者の包囲網が敷かれれば相手とて敵陣営の切り崩しを狙う。疑心暗鬼で不安に包まれるその精神状態こそが疲労の原因であって、負の循環は夫婦仲に同じ、離婚騒動は見るに堪えぬ。Mセンセイの慧眼恐るべし。
不幸にも私ども現職の背中には得票数が付いて回るから格好の標的になりやすく。そんな票の積み上げでどこぞの政党の支持を得たからには配下何万票はこちら、とか、誰それが寝返れば数万はこちら、なんて狙われがちだけど戦国大名じゃあるまいにそりゃあくまでも私を支持して下さった方々の数であって、私の言動が一万票を左右するものでもなく。業界団体とて同じ、推薦人に代表がズラリと並ぶも下々の肚はどうか、ましてやこんな御時世とあっては上の一言で動く票など...。やはり付け焼刃なんてのは続かぬ訳で日頃の所作に勝るものはないんだけれどもそのへんこそが勘違いのもとで取らぬ狸の皮算用。
さて、衆院選。勢力の結集などとは笑止千万、彼らにとっては一にも二にも今の政権が躓かねば出番は回って来ぬ訳でそこに「のみ」利害が一致した反対勢力。候補者とて節操無く、国の命運を委ねるに小粒すぎやしまいか。最近、ある支援者の方との話題が顔の話になった。当人は大学時代から私を知る数少ない有権者の一人なんだけど、彼曰く「顔が変わらぬ」と。それでは何ら成長が無いようでこの世界に生きる以上は多少スゴみを利かせたほうが然として良さそうではないかと反駁してみたんだけれども「スゴみ」はあくまでも道具にしかなりえず、やはり地位を追われても尚人気を博したあの御仁が如く道を歩んだほうがと教わった。
そうそう、恒例の首都圏4政令市の交流サッカー大会。今年は本市の担当にて贅沢にも本市が誇る等々力陸上競技場にて行われたんだけど、日頃は相容れぬセンセイ方も垣根を越えて愉しめるのがスポーツの魅力。そんな機会を通じてしか知り得ない当人の意外な一面こそが選挙ひいては人生を左右することも少なくないのではないかと。
(平成29年9月27日/2381回)