白恋

遠目にはほぼ同じに見える棒の高さもてっぺんのほうだけ切り抜いて縦軸の目盛を加工すれば大きな差に見せることが出来る訳で都合よく見せる手口に御用心、と国の役人に教わったことがあった。そう、棒グラフの話。年末年始の勤務表、私などは元旦を除く三が日、つまり二日間ゆえ丸は二つなんだけど大晦日から元旦は細分化されていて時間の割に出番が少ないように見えなくもなく。
年末に注文を受付けた名入りだるまは正月の参拝客に見えるように飾られるもんだから名を売ってなんぼのセンセイ方には大変好評であって、他に負けじと大きくしてみたり色づけてみたり。色や大小が当落を左右する位ならば私なんぞはとっくに金色の特注品でも注文しとる訳で、あくまでも自宅用にて「例年同様」とそっけなく返事をしておいたはずなんだけど、届いただるまが昨年より二回りほど大きく、いつもの棚に入らぬ上にちゃっかりと金額だけは...。
まぁそんな面々が相手ゆえに酒でも呑まねばやってられんと指定席を陣取れば呑んでくれと言わんばかりに目の前には泡盛が置かれていて気付け少々と始めたつもりが...。四合瓶といえども度数は四十数度の代物にて薄めるなんてのはもったいないとそのままにやっていたことは事実なんだけれども私一人が平らげたなんて話になっていて。その程度の話ならあり得んことではないのだけれども酩酊の上、巫女に絡んでいた、というか口説いていたなんて「おまけ」まで吹聴されて。
酒の肴には格好のネタらしくもっぱらそんな話題が村内を賑わせているとか。こともあろうに昨日なんぞは通夜の参列時に「あっ、酔っ払いだ」なんて言われる始末で、その前は「おい、巫女」であったし、そんな呼び方あるまいに。寒風吹きすさぶ中、目立つ舞台に巫女が一人でおるもんだから親切心に「白い恋人」を届けたついでに退屈しのぎの相手を演じただけなんだけど、まぁ二人だけの会話の中身は...違うか。悪名が無名に勝る数少ない世界にてそんな醜聞といえども話題に上がる方が忘れられずに...。
さて、そんな酒の話題に事欠かぬのが落語。昨年は高校の先輩である瀧川鯉橋氏による「井戸の茶碗」の一席を拝聴させていただいたんだけれども落語には多くの人生訓と示唆が含まれる上にあの語り口調だけで客を魅了する話術に教わることも多く、本年もそんな機会を狙っているんだけど、ナマ落語、寄席となると喰わず嫌いというか知人でも居らぬ限り機会少なく、まずは落語そのものの魅力を知ってもらわねば木戸銭には繋がらぬ訳で。
年末年始の特番の視聴率、昨今などはカメラ向こうの茶の間を沸かせるというよりも芸人自らが勝手に愉しんどるだけではないかと思しき番組も少なくない。正月のいつぞやの深夜に「超入門!落語THE MOVIE」の総集編が放映されていたけれども趣向を凝らした内容に隠れた名番組ではなかろうかと。
(平成30年1月10日/2404回)