横審

およそ年度末が目途とされる役所の計画立案。が、さすがに最終週に机上配布とあっては数日後には人事異動となる訳で「おい、ナメとるのか」と詰問してみたくもなるんだけど、時に年度末が好都合なことも。
道路工事の施工前に近隣の状況を訊かれて、「喜ばれこそすれども石を投げられるようなことないはず。ましてや、あそこの御宅は市の退職者ゆえ....」と申し上げれれば、「いえ、センセイ、それが一番危険だ」と見抜いた課長の慧眼恐るべし。相手の手の内を知るだけに同意に際してアレコレと条件を付されてしまったのは新人時代の話。
親戚縁者に市のおエライさんが居たらしく「遊んでる位ならば役所で働け」と縁故採用を公言して憚らぬYさん、退職後、相当年が経過するんだけどやはり...。事務所の留守電に不機嫌そうな声が残っていて早速に翌朝に訪ねた。およそ隔日、というか定曜日の出勤に「たまたまの」欠勤が絡んだだけなのだが、三日間の事務員不在に「架空(請求)はあるまいな」と機先を制された。で、肝心の用件ってのが...。
数ヶ月前に依頼された御自宅前の道路の補修。数年前に別のセンセイに頼んだもののなしのつぶて。で、私に鉢が回ってきて二番煎じながらも受けた以上は動かねばならぬ。何とかならぬかと指示すれば、あの凹凸というかざらついた路面は転倒防止の為に意図的にされたものと返答があって、まぁ確かにそう見えぬこともないのだけれども「しばし猶予を」と担当者。そのへん微妙な言い回しにてさりげなく「困難」と市の意向を伝えておいたものの、突如、実施する旨の連絡があったそうで。
そのまま放っておけば何ら生じぬのだけれども「どうせ年度内の余った予算で実施するんだろうから低価格での落札に手を抜かぬよう」と余計なひと言。が、敵も敵にて「我々も社員を食わせていかねばならんので」と当意即妙、機転の利いた親方の回答に義侠心に厚いYさんの心が動いた。「役所もひでぇことをしやがるな。これっぽっちですまぬが」と特別な差入があって、万が一、工事中に苦情があればオレに任せろと。で、めでたく完成した御礼にと菓子折り片手に三日間通い詰めたものの留守だったって話。実はいい人なんです。
さて、世は熟女ブームだそうで、「ならでは」の視点に教わることも少なくない。どこぞの七福神巡り二十回目の年にそちらの打診を受けたと本にあった。著者は元横審の内館牧子氏。そう、横審といえば巷で騒がれるあの話題。その手の話を知らぬものには砂の上に上がったからとて何ら変哲なく、土を踏ませろとの言い分は分からんでもないが、禁じられてきたのはそれなりの理由がある訳で。
折角の善意を咎めた対応への批判こそあれどもその一例を以て男尊女卑の象徴が如く槍玉に上げられるとさすがに異論を挟みたくもなり。稀なる事態への対応も一説によれば尻込みするオトコどもを横目に駆け付けたのがオンナだったとか。男女格差を巡る話は尽きぬが、女性が大臣になるならぬとは次元が違う話。そのへん女性軽視とひと括りにされたらかなわんと言いたいのだろうけどいかんせん厄難続きの状況にあっては物言えば唇寒しか。
およそ自らに不都合なものは何でも叩く世の風潮こそ由々しきはないかと思わんでもなく。
(平成30年4月10日/2422回)