神父

露骨な表現は品位に欠けると知ってか用いられる婉曲「別な役職」。過去の例に倣えば最大会派の団長の次なる鉢は...。勿論、純粋なねぎらいもあれば、冷やかしというかチラつかせてこちらの反応を窺っているように見えなくもなく、そのへん不思議と分かるもの。
合戦の勝敗、当落すらおぼつかんのに先のこと言わば鬼が笑う、我が世の春が終われば一丁上がりなんて陰口を叩かれかねず、上り坂を駆け上がる時こそ気力は漲る訳で...。まぁその行路が上り坂とも「別な役職」が坂上の雲とも思っとらんけど。
そう、あの時は現職が辞表出さずに留任しちゃったもんだから後が詰まって該当者が複数。順序あれども評議では決まらず、忍びよる多数派工作に次なる一手をおらがセンセイに求めたことがあった。「決は採らぬに限る。それが人事であれば尚更でそこで生じた遺恨は災いの種」と。
市議如き分際で口挟むは憚られるか海外情勢。離脱合意を大差で否決した下院。下された国民の判断が覆されかねぬ迷走の英国。大規模デモの仏国、移民流入に悩む独国、社会の教科書で教わった民主主義の優等生たちの挫折見れば自ら政治は三流などと卑下せずとも及第点位は得られそうな気がせんでもなく、それすらも自虐史観の産物だったりもして。
まぁそもそもに多数決なんてのは手っ取り早い分、微に細に思慮が働かん訳でましてや国民の意を問うなんてなれば聞こえはいいけど一部の口達者に煽動されてポピュリズム、独裁者の台頭を許しかねず。一般人よりも高尚な判断を下せるなどと高慢なことは言わずともその判断も含めて託された為政者としての職責を放棄、自ら無能を宣言するようなものであってどうにも好かん。ということで本日の学びは多数決は採らぬに限る、否、為政者に課せられた責任は軽からず。
残留か離脱か、国家の命運を左右しかねぬ重大事を国民投票に委ねた愚。紆余曲折があって現状になっとるのだからそれを一転させるに僅差の結論を以て最終判断とするにちと拙速過ぎたのではないか。されど用意周到に事を運んだつもりも予期せぬ不測の事態に為政者の言い知れぬ苦悩は他人様には知る由もなく。職を辞すばかりかバッチも外されて政界から完全に姿を消した同氏の回想録が出版されるとか。
株価当たらぬ評論家とて後追い講釈だけは達者な訳で世にそんな事例は少なくなく。つい最近もその手の話を二度聞いた。いづれも縁談絡み。一つは不仲な夫婦に迫る離婚の足音。そんな二人を踏み止まらせようとしたHさんの話。そして、もう一つは逆に縁談にこぎつけたい二人に立ちはだかる壁、周囲の反対に決断を躊躇する二人。踏ん切り付かぬ男女の依頼を受けたKさん。いづれも善意むなしく破談に終わるのだけれども巷に囁かれる陰口「彼のせいで」。
無言貫くも時効と知ってか開かれた重い口。そんな軽いものではないながらも本当に結ばれたいのであれば何を躊躇う必要があろうかと迫ったもののそれがかえって決断を鈍らせてしまったかもしれぬと述懐するKさん。そこに他意なく純粋に二人の前途を案ずればこその親心通じず。もしそこに至らば神父の誓約とて同じことを聞く訳で...。まぁ外野は勝手だからナ。
(平成31年1月20日/2477回)