大蛇

神無月ならぬ神在月が出雲の十月ならば神楽月とは十一月の別称だそうで、まずはそちらの話題から。天照大神が隠れた際に天岩戸の前で踊ったのが発祥、となると本場はやはり出雲国。ジャニーズばりの全国ツアーの途中、「特別」に本市公演を催して下さると聞いて市内小学生とともに鑑賞させていただいた。
本市と交流進む島根県益田市とはかねてよりスポーツ分野の交流が盛んにてその一翼を担うべく「萩石見空港マラソン」に出場、舞台が舞台にて当該地に降り立てずに松江から長距離の移動に泣かされるも当日は随分な歓待をいただいた思い出の大会。が、それ以上にマニアの間ではこちらが有名。通称「おろち」といわれる「奥出雲ウルトラおろち100キロ遠足(とおあし)」は未だ経験なく、いづれ走破してくれようぞと。肥後が清正公ならば出雲は「おろち」。そんな「おろち」が人気キャラだとかで演題もズバリ「大蛇」。
村人を救うべくスサノオノミコトが八岐大蛇(やまたのおろち)を退治に。その尻尾にあったのが雨叢雲剣、いわゆる三種の神器の一つ、草薙の剣で。面を被った上に大和言葉とあらば退屈はせぬかとの心配も杞憂。出雲に沖を加えた三大神楽の中でも他は六調子ながら石見だけは八調子。隣に座る事情通の解説によればいわゆる「エイトビート」はロックのリズム。途中に特別出演の募集行えば殺到する子供たち。公演後は本市の子供たちに機会を与えて下さったことに謝辞申し上げ、次回は本場膝元の夜神楽での再会を約束して会場を後にした。
さて、日々際限なく届く市からの情報にはその手のものも少なくなく、そのたびに教育委員会が報告と称して詫びに来るのだけれどもその一つに体罰に関するものがあった。こと最近は警察の調書並みに詳細な記述にてそのママを記すと、「(同教諭は)校外学習におけるグループ編成の話し合いに加わろうとしない児童を注意した際、暴言を浴びせられたことに対し冷静さを失い、児童の左肩を押さえつけ、強引に立たせようとし、その手を振り解こうとした児童の左頬を右手で1回殴打した」とあって、ついては処分したゆえとの内容。
経験浅き教諭ならばふとした拍子ってのがあり得るのだろうけど、当該教諭の年齢は五十一歳。それなりの経験有する教諭がそこに及ぶとはよほどのことであったのではないかと。冷静さを失い、つい手を出した、その非は認めねばならぬも肝心なのは生徒が指導に従わなかったをいかに認識しているか。昨今はヘンな権利意識が横行しとるから従わぬも権利、退学処分など出来はせぬなどと意図的な挑発行為もある訳で。そこを看過しては他への示しがつかぬ上に当人の為にもならぬ。教諭を処分して済む話ではなく本来の意義に鑑みれば生徒にも自らの行為の過ちを諭らせてこその教育ではないか。当該教諭は自ら犯した行為と処分に葛藤を抱きつつ歩まれるのだろうけど、それを糧として成長されることを願ってやまず。
実はこの齢にして初めて夏目漱石の「こころ」を読んだのだけれども繊細な心の描写が秀逸にてまさに人の深層心理を抉る鋭い洞察力に驚かされた。
(令和元年11月10日/2534回)