巨人

平日の昼間は執務あれども土日とあらば一日長く、本に埋もれる週末。
詳しい経緯は省くもスマホにて購入せし第一巻。養成ギブスを外した少年飛雄馬の剛速球にバントで応じる王貞治、バントとは卑怯ではないかと憤慨する飛雄馬なれど、あれを見逃さば捕手の大怪我は免れず、「あえて」と述懐する王に感銘受ける飛雄馬。いつかこの人と...。ちゃぶ台返しに鉄拳制裁は失われし時代の価値観なれど心に響くはやはり私も昭和の人間なんなんだナ。
さて、こんな情勢下とあらば公用車の通勤を羨む向きもあるかもしれぬが、それとて、前方座席の運転手との密閉空間。たまたまの咳に「よもや前夜に怪しい店など出入りしておらぬだろうな」と尋問すれば「どこぞの議長ぢゃあるまいに」と、全く意味が分からぬ。そもそも運転手といえど市役所までの通勤は電車にてゼロにならぬリスク。回りとの接触を断つことが物理的に困難な以上は不摂生に注意怠ることなく免疫が備わるを待つがやむなしか。
一部店舗に閉店を早める動きがあると聞いた。そりゃ勿論、拡大「防止」の名の下に行われるも逆の不都合も生じる訳で得失は未知数。市議会の次なる舞台、予算審査特別委員会を前に一部に背中を押される形で提案するは質問時間の短縮、いわゆる「時短」なれど、そこは何を隠そう議会運営の鬼門。国会の「桜」に見るまでもなく、視聴率とは別にそちらに矛先が向いてくれたほうが都合のいい役人少なからず。火の粉が降りかからぬようじっと静かに採決を待つが利口。
行政を監督する上で質問権は最大の武器。故に、何かにかこつけてその刃を奪わずと削ごうと画策する勢力はいるからそこに陰謀説というか黒幕の存在が囁かれたりもするのだけれども一方の議会側とてそれが果たして万人が聴くに足る内容かと問われれば...。議会運営の規則は議会運営委員会の協議なれど「時短」とあらば紛糾必至、その様子は記録として公式の会議録に残る訳で。ということで、白羽の矢が立つはこちら。議長案、否、正「副」議長案で。そして、ゴングが鳴った。
「そこに介入するは言語道断」「相手の片棒担ぐとは許せぬ」「こんな案では世の嘲笑を浴びかねぬ」等々。「おい、相手はアンタらが選んだ議長だぞ、言葉を慎まぬか」とは言わなんだ、いや、迫る相手の剣幕に言えなんだが、厳しい追及の矢面に立つは頼もしきかな「副」議長。相手が誰であろうと物怖じせぬ挑戦者の姿勢こそあっぱれなれど、こちとらんなのは分かっとる、されど...と協力願っとる訳で。
未だ全容解明に到らぬ状況下に付きまとう不確定要素。一斉休校にマスク一つとて専門家の見解異なる上に断定できず。逆を申せばそこに付け入る隙があるから反論側とて詭弁が通じる。が、低姿勢に徹して。以上、全て見透かす無所属のM市議などは、そこに正当性を争うは時間の無駄と知ってか「巨人が勝って短縮するようなもの、いいよ」と皮肉交じりで早々に退散。振った賽の目が出ちゃった話とそう割り切ったほうが賢い判断なのかも。
そうそう、最近読んだ一冊にあの作家の作品があった。最後は読者への問いかけで終わるそのエッセイのファンなのだけれども、当人風に申し上げれば、君はそんな私を笑うだろうか、と。
(令和2年3月10日/2557回)