芙蓉

巧拙の以前に外せぬ一句「この苑の主の如くや柿大樹」を拾った。久々の句会はおらがセンセイ宅の庭先を借りての吟行。植物園さながらも植物の名はとんと疎く、芙蓉といわれて浮かぶは三国志の芙蓉姫くらいなもの。芙蓉の中でも朝は白く夕刻に桃色に染まる変わり種、誰が付けたか酔芙蓉というのだそうで、残りし一輪を「深酒や散りそびれたる酔芙蓉」と詠んだ。

即興五句がしんどければ予め、との助言に甘えて用意した「色直し静かに進み秋の庭」の句が特選、なんて自慢話は横に置いて。当日の最高齢は九十八歳、町田市から通うTさんが拾った句に「敬老日今年も来たか追ひかへせ」と見かけた。敬老の価値観こそ失われてならぬも意外とそのへんにホンネが隠れとるのではないかと。

閑話休題。詐欺の被害に遭うは金銭有すればこそ。必要以上は災禍の元凶、必要とあらば自ら出向く、と伝えるも絶えぬ情報提供。他言無用などと聞かば余計に。酔った勢いでつい、なんてのもなきにしもあらず。口外せぬよう含める位ならば言わねども。こちとて精神的な負担ばかりか、ありもせぬ漏洩を疑われるは不本意にて聞かぬが仏。が、んな横着は私位なもんで、獰猛な連中などは隠しごとは一寸許さぬ、そこに介入する権利があると舌鋒鋭く緩まぬ追及。

さりとて、火も通っておらぬ料理を人に出せるか、いや、完成品を出されても手直し効かぬ、献立位は見せれんのか、いや、食材、ついでに調味料の分量まで...と際限なく広がる要求。直情型の議員に対して石橋を叩いて渡るが役所。そこはいつもの攻防なれど、曲がりなりにも市民の皆様から選ばれた事実ってのは役人に対して絶大な威力を発揮するもので、「オレたちは選ばれた存在だぞ」との脅し文句に下されし土俵際の判断。

確かに隠蔽と判断されてもやむなき例とてあるものの、不用意な情報が招く混乱は枚挙に暇なく。そこを克服するは相互の信頼、いや、実際は提供が報道に遅れるに相手の面子が潰れかねず、信頼というよりも恐怖心が勝った、ってのが正しいかも。そう、一部の議員が扱い注意とされた情報を「解禁日」前に自らの記事として投稿、市民の皆様の目に触れることになったってんでひと騒ぎあって。

一刻も早く知らせねばとの使命感に燃えるは結構なれど、そのウラには特ダネの記事が目を惹かば自らの手柄として名が広まるに違いないとの下心が隠れていないとも限らず。そりゃ面白くないよナ、ヨーイドンのはずが「卑怯」ぢゃないかって。世が世なら、否、証券業界ならば情報の漏洩は厳罰に処される訳で。それ以上に守秘義務を破るは信義にもとる、顔に泥を塗られた格好の相手方。怒髪天を衝いてか後姿のあの御仁が抗議に来ると言われて。

あくまでも「個」の話、と突き放すは容易なれど、たった一つの汚点に全体の関係がこじれるは本意ならず。何よりも他の議員が報われぬ。当事者が反省しとるとの言質を得て波風を鎮めるべく。有権者とて賢いから何も当人のみの実績などと信じるはずもなく、そこに得る票以上に失う信用の方が大きくはあるまいか、と老婆心ながら。

そう、言い忘れてしまった。冒頭の句は「主」をいかに解釈するかで意味合い変わり。そのへんも俳句の魅力かと。

(令和2年9月25日/2596回)