塾代

子煩悩、というか心配症の母からメールが届いた。「口座の残高を確認しなさい」。久々の通帳記入にエラー表示の画面を見れば余計に募る不安。窓口に足を運べば磁気の劣化が原因だそうで。いつぞやに言われるがまま妻に印鑑を渡して以来、初めて知る子の塾代。あくまでも任意にて全額が保護者負担とならばその料金にせざるを得ないのだろうけど、塾に依存せずと高い学力水準を育むことこそ公教育の役割。

塾代にしてそんな状況なのだから大学の学費となれば言わずもがな。その額に躊躇、いや、断念せざるを得ない御家庭とて。金銭的な理由により通えぬ若者の為の奨学金も大半は後年の返済を伴うものだそうで。それが塾代ならぬ学費とあらば利子とて軽からず。ヤミ金ぢゃあるまいにせめて利子位は何とかなるまいかと。目下、自治体にて進む奨学金返還支援制度も肩代わりの条件は御当地への残留とか。四畳半の下宿住まいに蛍雪の功なりて名を馳せた美談のみならず、と知りつつも奨学金制度が充実されんことを願っており。

さて、決算審査特別委員会は分科会を終えて総括質疑が迫る。対象はこの三月迄の令和元年度分にて税収等には目立った外傷なくも懸念されるは四月以降。先手打つべく動き出す全国市議会議長会。まずは不評と思しき臨時財政対策債、いわゆる臨財債。名に見るまでもなくあくまでも「臨時」であってその返済は国が交付税として措置する制度設計にて不交付団体の本市は無縁なれど...。

そもそもに交付税の財源は国税五税の一定割合とされる一方、歳出側の必要額は全く別な計算式により算出されるからそこに生ずる差異。そんな時は大概が歳入方が足りぬ、歳出方とてエラい役人が緻密に算出した「必要」額なのだからおいそれと減らす訳にもいかず。そこに臨財債なる妥協の産物が編み出されたのだけれどもそんな二重基準が生む悲劇。臨財債を即刻廃止した上で五税の法定率を改むるべしと。更には減収に対応すべく市債等の発行の為の条件緩和も含まれるものの、自由度が上がればそれだけ責任も生じ。タガが緩まば野放図に。無尽蔵な発行は自治体の財政再建が遠のきかねず。

そう、大雑把ながら市債を巡る状況について、ほんと「大」雑把だけど。毎年、約五百億円の市債を発行して資金を調達、その返済は三十年後の満期一括償還が原則。そちらもおよそ約五百億円の返済が毎年行われており。小さからぬ額にて無鉄砲では回らぬ。計画的な返済の為に発行の翌年度から三十分の一づつの積立、それがいわゆる減債基金。その借入については他に譲るも厄介なのは市債発行に生ずる利子。年利一分と申しても元金が五百億円ならば五億円。それが翌年度以降も当該年度分が上乗せされて雪だるま式に。現在は利払いだけで年間百億円以上。それが毎年あちらに流れているとなるとあの高視聴率も頷ける訳で。

見そびれてしまったことをこぼせば、求めずと運転手から録画が届いた。総括質疑前の最終回に思わぬ副次効果が生まれぬことを願ってやまず。いや、逆か。

(令和2年9月30日/2597回)