番星

通称「バンボシ」こと一番星の星桃次郎を演じるはあの俳優。前職がそちらにて業界に詳しい前席とその話題に興じることしばしば。昭和、平成、令和と変遷を遂げようとも失われぬは荷と人情、でありたいと。

待てば海路の日和あり、相次ぐ中止に陰鬱な日々では大きな損失、勝手に予定を組み込んでみたものの、翌日の式典にはくれぐれも遅刻なきように、と釘を刺され。運び荷に代用効かねどこちとらは「副」議長なる代役が控えており。万が一に備えて根回しをせんとする秘書に要らぬ心配と伝えたものの、事故渋滞など不測の事態に理由聞かれて「遊び」などとは口が裂けても言えず。夜明け前の出発、早朝の中央道に国の物流を支えるトラック野郎たちの働きぶりが窺い知れた。

負けに不思議の負けなし、まいど敗因は「過信」と知りつつ。眼下に広がる雲海と山頂の大雪渓をウリにする乗鞍天空マラソンは日本一高い道路と高低差が自慢。いつぞやに地元出身のトレイルランナーが招待されて挑んだ結果、前年度の優勝者に「大」差をつけて。平坦なロードと坂道では使う筋肉が異なる、ましてやオフロードともなれば問われる瞬発力に上半身を含む強靭な肉体。酷使の度合い、瞬時に受ける衝撃を見れば自ずから向くは若者にて挑戦者の大半がそちら。

北信濃の括りにて豊富な自然を大々的に宣伝。 累積標高二千米以上、水平距離三十二キロ、志賀高原のトレイルの完走を遂げた。制限時間八時間三十分に完走タイムは七時間五十二分二十二秒。もはやマラソンというよりもアスレチックや登山に近く、マラソンの延長との過信に敗北を喫した前回の教訓を踏まえて「坂」を克服したはずも軽率な判断に大苦戦。

そもそもに路面が違うのだから靴底の形状とて「全然」違うと知れど、当該種目に没頭するは寿命縮めかねず、購入を渋ってロード用の平坦シューズで代用したものの滑るわ滑る。足元見ねば転倒は必至、次なる一歩の着地点に気を払い、身体の均衡を崩さぬ為に斜面に手をついて、というか木の枝や道の脇に群生する笹の茎を握り、全身でバランスを維持、ゆえに膝や太腿のみならず上半身まで、まさに満身創痍。翌日の寝不足の原因は睡眠時間ならぬ寝返り時の激痛にあり。

そう、市のイベントにコロナのみならず雨天中止が目立つは市長ならぬ議長に原因、と私の雨男説が陰口として囁かれとるそうだけど、んなものは風評以外の何物でもなく。世界自然遺産で有名な屋久島は年間の大半が雨なれど、その日だけは曇ならぬ「快」晴であったし、今回とて大会史上最高の天気と司会者が絶賛していた位だから。自慢にもならぬ自慢にてそんなところで運を使い果たしとるから肝心な公務の時に...。

この間、降り続いた雨が前夜には雪に変わり。草茂るゲレンデを駆け上がるも山頂は雪景色。雪のゲレンデをスキー板ならぬ運動靴で駆け下りる爽快感。紅葉に雲海、雪に泥の三乗と贅沢三昧。大自然を征服せんと臨めどレース途中にはその無謀な挑戦を後悔し、畏怖の念だけが増長されて。まさに「泥んこまみれ」、童心に戻りし大人たちの大運動会、と発想を大転換してしまえば何ら。もう二度と、いや、懲りずにまた挑みますけど。

(令和2年10月21日/2601回)