丹沢

Nセンセイの紹介と案内されるは関係者以外は立入禁止の扉向こうの貴賓席。卓上に所狭しと並べられた品々の出処が気にならぬといえばうそになり。折角の相手の厚意を辞退するに忍びず、何よりも当人の身銭の可能性とて、いや、限りなくゼロだナ。

そんなオイシイ役職を期数にモノをいわせて独占するなど人の風上にも置けぬ。が、わが世の春を謳歌せし時代も終焉を迎え、新陳代謝が図られた結果、つい最近なども競馬の収益から18億円もの配当金が本市にもたらされ。そんな先輩がかつて手放さなかった利権、ならぬ「役職」の一つ、神奈川県内広域水道企業団議会議員を新たに仰せつかることになった。

安からぬ投資を伴う以上は各市に一つ設けずと共同利用が図れれば、と広域的な役割を担うが県。県内の「全」市町村に対して安定して供給することを目的に県と横浜市、横須賀市と本市による企業団が構成されており。執行の責任者が派遣された役人ならば監督役とて有権者から選ばれたセンセイが、と配分された枠に市議会の「推挙」により派遣された、という経緯。

さりとて、本市の水道などは市制施行に先立つ大正10年に給水が開始されて100年。十分な実績に何も県や他市に依存せずとも。二兎追うに不合理は生じまいか、との懸念。対する企業団の結成は昭和44年。まさに高度経済成長を迎えんとするに水に供給は欠かせぬ、新たな水源を確保せねば市内の水需要に対応しきれぬばかりか、迫りくるは経年劣化に伴う施設の大規模改修。ということで渡りに船か、企業団の設立時に参画して得た水利権や50万5,600㎥/日。

そう、この分野で肝心なことは「施設の給水能力そのものが水需要を意味しない」ということであって、日々流動的な水需要に対してそれを上回る給水能力を確保せねばならんのだけど、およそその手の話は予想以上に多く見込まれがちなもので。そのへんの適正化を図っていく、というのが一つの方向性。

この間の本市における水需要のピークは平成2年度に記録した63万1,100㎥/日。その後は節水意識の浸透により微減して今日は50万㎥/日で横ばいが続く。対する給水能力は98万9,900㎥/日(潮見台174,300㎥、長沢217,000㎥、生田93,000㎥、企業団505,600㎥)。と見るとやはり企業団への参画は必然の結果に見えなくもなく。

が、さすがに需要の倍を有する能力は無駄ではないのか、とは当然。その乖離の解消こそ焦眉の急と市内3つの浄水場を整理して「長沢」に集約。大胆な整理統合を行った結果、75万8,200㎥/日(長沢252,600㎥、企業団505,600㎥)となり、年間7億円の縮減効果を生んでおり。いや、そりゃあくまでも市側の努力。

水量は分かった、が、勘定はどうか。現在、本市における水道の料金収入250億円に対して企業団への支払いは受水費の名目で年間80億円。市民の利益を鑑みれば受水費は一円でも安いに限る。が、立場変われば態度も豹変、「利権」を死守せんとすれば本市に受水費の増額を求めてみたりもせぬとは限らず。

目下、状況を知るべく、などと丹沢の大自然の中を走っているのだけれども、やはり県名に「川」の名を有するだけに立派な水源ではないかと。

(令和3年6月10日/2646回)