剣豪

「隙がない」とは賛辞か否か。剣豪ならばまだしも凡人とあらば。隙なくば人は寄り付かず、人が寄らねば運も味方せぬ。尚且つ、前段に修辞が付されればどうか。

「こう見えて隙がない人」というのが私への評価だそうで。評した主は何を隠そう現職の議長殿。閉ざされし議長室の扉に地声の大きさ、背丈は相手を威圧するに十分。むしろ隙なきは御身のことにあるまいか、なんて。いっそこのタイトルも「異議あり」から「隙あり」にでも、違うか。

さて、本題。こないだの委員会における報告の一つに「市長選挙及び衆議院議員総選挙における選挙公報の配布について」なるものがあって。未配に遅配の苦情は留まること知らず、投票二日前に届くは要改善、と支援者から直筆のはがきをいただいた。

届けねばならぬ、が、届いたことが仇となり。むしろ届かねば気付かなかったかも、それも違うナ。いや、「遅い」ってことはそこに判断が覆る余地を残すってことだから、そこをガッチリと固めきれぬあたりに候補の敗因がありはせぬか、とそれはまた別の機会に。

原稿の〆切は告示日の夕刻。事前に検閲済と申しても石橋を叩いて渡るが役人、入念な審査に時間を要し。印刷屋がいかにフル稼働で輪転機を回しても以降に生じる仕分けに配布の手間とて軽からず。全戸配布を期日前投票に間に合わせるは物理的に不可能、と出来ぬ理由が並ぶ説明。

まずは急な解散。急と申しても任期満了にて十分に想定は出来たはず、とは市議側の反論。ましてや、本市など市長選、市議補選も同日執行ゆえそちらの業者の手配は済んでいた訳で、一括して頼まば大幅な費用縮減に繋がるではないか。いや、そこは認識するも肝心のモノが届かねば配布は出来ぬ。

衆院選を担うは市ならぬ県の選管。こちら以上に日数を要するは印刷数のみにあらず。何と申しても全十八の小選挙区に比例区まで含まば候補者の数とて。「別途」配布の決断も直前に迫るは投票日。法定期限内に五十万を超える対象世帯にくまなく、とされる対価や安からず、業者との随意契約に単価は市長選の三倍だそうで。

ならば、前回はどうか。配布を請負うは地元の町内会。いや、請負うというよりも押しつけ、というのが正しい。それとて、何も問題が無い、と言えばウソになり。ただ、金銭の多寡以上に顔見知りが役割を担っておれば文句は言えぬ、つまりは防波堤の機能を果たしていたと見れば。まぁそれとて根本的な解決にはなっておらんけど。

それだけの世帯に届けんとするに日数を要するのであって、告示日に「原本」は入手できるのだから何も紙媒体の配布に限らずと。そもそもに閲読率とてどの程度か知らぬ。ならばいっそネット上に公開してあとは勝手に。

特設ページでも開設して事前に届く投票案内はがきにQRコードでも付しておかば。「ついで」に選挙ポスターなんぞも一緒に。納期短縮の前に為すべきことはありはせぬか、と。

(令和3年11月30日/2679回)