裏庭

麻生いけばな協会の作品展にて会長自ら御案内をいただき、礼状に一句、花心酌む作品や人集ふ。無季になっちゃったけど、まぁいっか。ほんの数日といえども花とて生き物。日々腐心されている様子が窺い知れて。

見えぬものが見えるように、聞こえぬことが聞こえるように、日々そんな姿勢で接すべし、と禅問答が如き教え説くは幼稚園の理事長。

罪人ぢゃあるまいに顔を隠すなんぞは、と役所通りにて行く手を阻む不審者、この無礼者めっ、と言いかけて気付く、相手はくノ一。が、「せんせっ」などとチャーミングな演出ぶりは只者にあらず。マスクに覆われし面を認識するに数秒を要してしまったが、よく見ればY市議。降りかかる難題に憮然とした表情で歩いていたらしく。んなしかめっ面では人も寄りつかぬ、と言いたげな。

いつも目を惹くタイトル。「老後の資金がありません」とか「子供の学費が払えません」、後者はニセモノ。時事ネタ、現代社会が抱える病巣に鋭く切り込む垣谷美雨さんの最新刊は「定年オヤジ改造計画」。まぁそういう内容であり。定年を迎えた職員に一筆添えて。最近なんぞは退職前に「心得講座」なんてのが催されとると聞いたが、んなことは教わることか。

隠居の身はこちらも同じ。持つべきものは友。議長時代の同窓、関東五市の元職の方々に誘われて。どうせなら三冠、なんて声はどこにもないのだけれども不思議と縁は生まれるもの。三権の長ともならばただの議長にあらず。「秘書」「部屋」「車」どころか「公邸」もあてがわれて。

大年増が相手とあらば鰻でも食わねば太刀打ちできぬ、との毒舌ぶりに、本人前では冗談ではすまぬ。政令市の元議長が出禁なんて、訳ないでしょうに。くれぐれも粗相なきよう再三に釘を刺されるも借りてきた猫では。互いに顔位しか知らぬ相手との面会に悩む話題。与えられた時間は数秒。偶然に居合わせた商談先の社長を相手に何を伝えるか。その場面になぞらえて「エレベータートーク」というのだけれどもそこを意識すべし、と前職時代に。

その間柄は知らぬ、が兎にも角にも「ファン」であるらしく、その名は随分と聞いた、というか「聞かされた」。その旨を告げれば「元気?」と旧知の御様子。ってことは自ずから話題は見えてくる訳で。さすがおらがセンセイ。イベルメクチン、あれもそちらが発端だったはずであり。包容力というか人を飽きさせぬ独特の雰囲気に尽きぬ話題。入口に控える執事役の所作にようやく重い腰を上げた。任期後はぜひ御一緒に、との申出にも笑顔で応じて下さって。

そう、さっきからずっと気になりしは窓外。あれだけの庭があればさぞ上達も早かろうに、との声が聞こえてか、「いや、近くで見ると意外と」との執事役の証言を確かめるべくズケズケと。ふむ、言われる通りフェアウェイというよりも深いラフだな。そこに立ちて気付くは周囲の高層ビル群。贅沢な空間、というよりもこれでは常時監視されとるようで。んな不躾な客など。後日、出禁の通達が届かぬことを願っており。

(令和4年4月30日/2708回)