五五

人脈こそ財産、何も区内の有権者にあらずとも。知人を介して最近知り合いしSさん、いや、シゲさんもその一人にて。

初対面の際には、しかとこちらの本職も紹介いただいたはずなれど、平日の昼に着信があって、「午後からハーフどうか」って。一見、天真爛漫に見えれども己に厳しく、腕は一流、指導者の免許も有するとあらば断るに後ろ髪を惹かれ。

そう、ヒマな職業と察するはシゲさんのみならず。おらが代議士からの要請に拒む理由なく立つは駅頭。何も好んで炎天下の真昼にやらずとも。そもそもに汗だくのチラシなど、いや、これが意外と。苦行に耐えるに欠かせぬ褒美。

昼飯に旨いもんでも食わねば一日が持たぬ、とこぼす一言に反応する隣の秘書のイチオシや「マプレのタンメン」と。ふむふむ、確かにどこかで聞いた出店の話。なんてことも含めて、ちゃんと地元は歩いておりますゆえ。違うか。

閑話休題。市議などと申しても緊張感を抱くは一部の管理職位で。「今日はセンセイが諸君と一緒に」との所長の挨拶もどこ吹く風、私語が絶えぬ。「おい、コラ、ちゃんと人の話を聞かんかい」と一喝こそせぬまでも、以来、誘い受けること少なからず、暑気払いはどうか、と清掃現場の連中と一席をともに。

そもそもに、と事情通が口火を切るはあの話題。こんなもんを読んどるとはおぬしらも私に劣らぬヒマ人にあるまいか、余暇はゴルフに興じるとか、もそっと別な。

潤沢な財源を背景に進めんとする「直営」に欠かせぬ大量採用。「正規」の身分が保障する年功序列の給与体系にのしかかる後年の負担。同じ公務員なれど「見てくれ」で判断されては事務職にかなわぬ。ラスパイレス指数が云々などと証拠を固められて迫られる決断。

昇給は55歳まで、との一方的な宣告をそのまま持ち帰らば暴動沙汰になりかねぬ。折衷案か妥協の産物か、そこに活路を見出さんとまとめ上げた労使交渉の主役たちの労は察するに余りあれど、んな経緯や密約は「文字」に出来るはずもなく。いわんや「55」など。

55歳以降は「職長」に選ばれし者のみが昇給の資格を得。本来ならば全員に支給されるはずの昇給分を選ばれた数人が搾取する構図は理不尽に見えなくもないが、一方では、少なくともその年齢まで懸命に働かば昇給とてかなうやもしれぬ、との期待は彼らにとってマプレのタンメンとは比べものにならぬ報償となり。

当事者の退職とともに生じる空席を争うは同い年、だったはずも、いつしか40代の職長まで現れては狂う目算。5年で終わらぬ任期に生じぬ空席、年齢に満たず任命されるは実力の証とばかり吹聴されては、かたや任命側とて過去の慣例など打ち破ってみせん、などと改革者然とした私欲が勝っていたりもして。

そこだけは侵してはならぬ不文律。働かざるもの食うべからず、ろくな働きもせんのに昇給のぞむは論外なれど、壮絶な死闘の末にもぎ取った果実を私欲にまみれた身内に剥奪されるは何とも。

下、三日にして上を知り、上、三年にして下知らず、ってね。ちゃんと下は見ていますゆえ。

(令和4年8月10日/2727回)