卒論

利用者は一人ならず、今回は先約ありて御希望に添いかねる。が、施設は当方のみならず、その日にこだわるならばとりあえず他を利用されてはどうか、と伝えて納得いただいたはずも。

利用できるはずのサービスが利用できぬは違約、ましてや、施設側とは「そういう契約だった」との通報が市に寄せられ、始まりし詰問。それは役目として結構なれど、相手の言い分を鵜呑みにしたばかりに要領を得ぬ質問が繰り返され。「契約」とて相手方の誤解だったとか。

本来ならば利用者とのいざこざに沈静化を図るべきもかえって騒ぎを大きく、との不満。そのへんは制度というよりも個の資質にて。中には不器用なものもおるよ、されど、そこを補うが組織としての役割にあるまいか、と上席を呼んで。

こと最近などゴルフ本しか読まぬというに七十七頁にも及ぶ長編。修士課程の卒論を読んで感想を、との依頼が舞い込み。専攻や政治学と知れど人選を間違えておらぬか。論文の表題や二元代表制における自治体議会についての考察。「強い首長、弱い議会」は本当か、なる核心に迫らんとのことらしく。力関係や明白、両輪などと本気で信じとる市議がいるとすれば、との一文を冒頭に。

選挙で選ばれる議員により構成される議会は独立した別組織にてその補佐役を担う事務局の人事権は議長にあり、とされるも予算権は首長側にある以上、常に市長側の意向を忖度せざるを得ないのではないか、との疑念。議会事務局の人事にどこまで関与できるか、というのはベールに包まれ。

結論申さば、市長と議長の個人的な関係に負うところ大、というのが平凡な回答であって。良好とあらば議会事務局のみならず他局まで。いや、彼こそ局長に、なんてのは越権と知るに、あの部長はよくやってくれる、とか。さりとて、それが当人の昇進に結びつくかは別。

何せ批評する当人が当人なだけに、彼が推薦する人物ならばやめておこう、なんて。そう、あくまでも相手方の善意であって制度的に担保されたものになく。

そう、執筆者の分析によれば本市の場合、議会局長の就任前の経歴を見るに議会における経験長く。されど、本市などは長らく革新市政が続き、最大会派から選出される議長と市長の間には「ねじれ」が生じていた訳で、議会の畑が長いというのはいかなる理由か。

あくまでも推測の域、との前提の上で。首長の独断専横を抑制せんとの自浄作用が働いた結果にあるまいか。歴代いづれも、と限らぬまでも議長もしくは議会側の意向を優先して動く、そこに市長側の反発を買わぬか、と言われれば、そのへん相手を手玉に取る才に長けた人物が自然と。それこそが議会事務局としての矜持であって。

仮にどこぞの自治体において、自らの意向に従う忠実な職員を派遣し、議会側の言論を牽制せんとの意図が首長側にあるとすれば、本当の民意は酌むことが出来ぬばかりか、身辺をイエスマンに囲まれては裸の王様になりかねず。首長として議会事務局の人事に介入するのは最小限に留めるのが結果的に賢い選択といえよう、とエラそうに結んだ。

(令和5年1月25日/2760回)