私欲

練習では正確無比に打てたとしてもいざコースに出れば同じようには打てぬところがゴルフの妙味。微妙な心理に私欲が勝らば結果とて。

どれほどの陳情であろうとも相手に過度な期待を抱かせてはならぬ、つまりは相手に告げる実現性は常に低く、というのが賢い対応と知れど。四年に一度、大きく見せねば、との欲に押されて。是非に及ばず、あとは「いつ」「どうやって」やるか、だけと。

その手の依頼は少なからず。大別するに、まずは、予算不足を理由にシブる役所、何とか年度内に、と前倒しを求めるもの。そして、もう一つは、そこに一部含まれる私有地も一緒に。そう、道路舗装の話。私有地とあらば私費が原則。されど、既に公道と一体化してフツーに利用されている場合など道の半分だけが舗装されて残りが砂利のままでは逆に苦情が寄せられかねず。

ゆえに、「ついで」、というか「公共に資する」を理由に行われることしばしば。さりとて、原則が原則だけに役所とて「やる」とは言わぬ。つまるところ、公私の比率や状況に応じて判断、「要相談」とされ。いかにそのへんを処理するかが腕の見せ所。

どんな些細なドブ板といえども必ず現地を見ねばならんぞ、とはおらがセンセイの助言。劣化著しき道路を何とか、との依頼に訪ねる現地。「さすがにこれは私欲が勝り過ぎてはおるまいか」との難所なれど、過去に市が、とは本人の証言。が、それ以上にあそこまで大言を吐いた手前、退くに退けず。道路公園センターにて何とか頼む、と頭を下げた。

所長自ら現地に赴かれたそうで、翌日に聞かされる結論や「全て民地、完全な私道にて介入の余地なし、一切の手出しは出来かねる」と。いや、それではこちらの顔が立たんではないか。いや、おぬしの顔は関係なかろう。そこを何とか、と拝み倒さんとするも。さすがに限界だな。

エラそうなことを申し上げたが、今回ばかりは意に添えず、すまぬ。直接の面会に告げる結論。いや、間違いなく市の土地のはず。事実、そこに下水が、と退かぬ陳情主。さりとて、役所の図面に「ない」のだから「ない」のであって、とキッパリ告げれども釈然とせぬ様子。「何とかならぬか」-「ならぬ」の押し問答が続いて。

その齢にもなって世には無理が通らぬこともあるのが分からんのか。証拠とばかりに役所からの図面を渡して足早に退散せんとするに、「おい、待て」と後ろから。「まだこれ以上、何か」と一瞥するに、「場所が違う」。えっ?

御自宅前と聞くにどう見てもそこしか。いや、その一本裏手に細い路地ありて。昔の「馬入れ」、今は奥に新興住宅が並び、子供たちの通学時に抜け道として。ならば、と再度訪ねるに正しい状況は掴めた。が、この期に及んで場所が違ったなどと。

菓子折りを用意すべきか否か。電話で申し上げにくき儀ありて、貴重な御時間を拝借できぬか、との猫なで声はキモかったか。これが逆ならば。すまぬ。

(令和5年2月25日/2766回)