天職

卓に向き合うは若き日の二人。酒を片手に交わされるは英雄論。

英雄とはかくあるべし、と持論を語る曹操。「そのような立派な人物など今の世におりましょうか」と返す劉備に、「いる。余と君だ」と指さされ。突如、轟く雷鳴に卓下に隠れんとするは劉備の機転。この程度なら恐るるに足りず、買いかぶりすぎたか、と笑みこぼす曹操。正史では卓下ならぬ箸を落としたとされており。三国志オタクゆえ。

小料理屋に聞く理想像。耳立てずと背後の会話が聞こえてしまい。カウンターに陣取るは常連と思しき二人の男性。与党贔屓らしいのだけれども昨今の情勢に御不満の様子。地位が人を育てると申しても育つに「いい」方とは限らず。もてはやされるに我こそが正義なりと独善的に。

官邸の私物化とて親バカが過ぎぬか、と諫めるが側近の役目、それこそがまさに忠臣。主君の意に添わぬこととて世の為、人の為とあらば。それで反感買う位ならば別な主君を探した方が。いかんせん、「にもかかわらず」といえる政治家が見当たらぬ、と聞くに、もしやこの御仁もあの本を。

文中では対人ならず。逆境や困難、理不尽な状況にもめげず。自分が世間に捧げようとするものに比べ、現実の世の中がどんなに愚か、卑俗であっても、断じて挫けぬ人物。どんな事態に直面しても「にもかかわらず」と言い切る自信のある人物こそが政治への「天職(ベループ)」を持つ、マックス・ウェーバー著「職業としての政治」に。

政界にはおらずとも。あちらには。信念貫かんとして立ちはだかるは。時の総理を相手に反目張れるは天下広しといえども。戦後の焼け野原に跋扈する愚連隊の更生に一役買うは草野球。そのかたわら本を読むべしと自らの書庫を開放して。読書こそ成長の糧。本好き読むは探検隊のみならず過去にこの御仁の著書もちゃんと。ドキュメンタリー「ハマドン」がシネマ・ジャック&ベティほか映画館にて上映中。

で、本題。公共の施設とあらば広く一般に開放されるべきであって、独占は許されぬ、と申しても、あくまでも「ルール」に則り優先権を得ているだけの話。他の参入を拒むものになく。年数回の公の会議にて共存が図れてきたはず。ばかりか無償で借りる以上は何かしらの見返りを、と求められずとも、率先して清掃作業等に協力してきたはず。

そんな折、突如浮上するは、開放プロジェクトなる計画。以降はネットからの申込が可能と知らされるも自由化するに不都合は生じはせぬか、と学校側に詰め寄るに「上」の意向にて仔細は定かならず、と担当の教師も困惑を見せたとか。

そりゃ学校側とてわが本分は子供たちの教育にあり、施設開放はあくまでも副次的なもの、本庁が担ってくれるというならば余計な口は挟まずに限る。かたや本庁は本庁で申請の手間を軽減、利用調整の煩わしさを一気に解消、などとの業者の提案そのままに。

見て見ぬフリの現場に現場が見えぬ本庁。以上はあくまでも勝手な憶測なれど、不安拭えぬ利用者の声は届いているか。

(令和5年6月5日/2785回)