人柄

日比谷、東大、一流企業と世に羨望の経歴、のみならず、伴侶にも恵まれ、順風満帆に見えた人生。が、こちらは偏差値が通じぬ世界、志すに代償や小さからず、借金、離婚、大病と。

政党を渡り歩くに無節操とさげずまれどもその政党の公認を得るに晴れて。苦節二十年、長き浪人生活に未だ冴えぬ風貌も目の輝きは衰えておらず。運を掴むは人柄か。肩書が生む信用、議員としての報酬以上に人に会えるのが何よりも、と本人。

逆はどうか。帰りの電車を待つホーム上の着信や無念の涙をのみしS君。現職時代に世話になったMさんから誘われ、二人で酒を酌み交わした帰りだそうで。あの当時、知己を得たのは私のおかげとばかりに。そう、確かあの時はプロレスの話で。

そんなMさんは既に役所を退職された身。仕事の切れ目が縁の切れ目。退職後なんぞ顔すら見たくもないはず。しかも、S君とて落選にバッチを失っており。二重で疎遠となるべきところ、結ばれる絆や両氏の人柄に負うところ大にして。

ちなみに、この四月から若年がん患者への在宅介護の適用範囲が拡大するにS君の功績小さからず。そのへんが上手く伝わらぬは何とも惜しい。

人は一人では生きられぬ、とハマドンも映画の中で。誘われるうちが花、とばかりに久々の視察。も、もてあます時間。もてあます、と申しても、朝五時の起床に十キロのラン、シャワー浴びて朝飯。八時には万事整えども相手の都合ありて。滞在を余儀なくされるホテルに普段見ぬテレビの電源入れて映るはそのチャンネル

(令和5年8月11日/2798回)