夜道

海抜ゼロから標高三千米まで、というのが売り文句。事実、波音聞こえる砂浜から目指すは遠くにそびえる立山連峰の主峰、雄山山頂、標高三千三米。立山登山マラニック。

マラニックとはマラソンとピクニックをかけた造語。フルもしくはそれ以上の距離なれどピクニック気分で。とそんな意図で生まれたはず。順位は二の次、制限時間内の完走を目標とする中にあって、ピクニック気分とは好都合。

スタート地点、浜辺のキャンプ用コテージはいづれも満室。最寄の富山駅からはシャトルバスの運行あれども既に定員。ならばタクシーでも。いや、スタートは早朝四時、受付は三時とあって。下した判断や「徒歩」。しかも、隣駅のほうが歩くに若干近く。

夕刻までの委員会を終えてそのまま移動。宿の到着が午後八時過ぎ。翌日の起床は一時半、勿論、午後ならぬ午前。二時のチェックアウトに深夜の人なき道を。途中、背後から車の気配、そりゃ田舎といえども深夜に走る車の一台位は。速度落として横付けされるは不気味な白いワゴン。

ふむ、道を尋ねんとするにもどう転んでもこちらは部外者にしか見えぬ。それにしても夜道を一人で歩く女性、ならぬオッサンを狙う目的とは。一瞥くれるに運転席は女性。こちらと目を合わせず助手席を物色しとるようで。無視に限る、としばし歩かば再び。

とすると、やはり狙いは私に違いなく、身代金が目的ならば不適格であるし、よもや、新手の誘拐犯にあるまいか、と身構えるに、運転席の窓が開いて。「兄さん、乗っていく?」。後席には誰もおらず。こんな深夜に女子一人の運転、同乗を誘われるに、まっいいか、なんて。ほんとの話。聞くに大会ボランティア。ならば何故に最初に声をかけぬのか。

これから過酷なレースに挑む前から近からぬ会場までを歩く、などというストイックな人に声をかけていのだろうか、と躊躇したらしく。いや、決してストイックではないのだけど。徒歩ならぬ車とあらば到着早く、持て余す時間。車内に男女二人となれば。よもや後ろに記者など。

そうそう、再開発が浮上すれども前途が見えぬ柿生駅周辺にあって解消を求められるは開かずの踏切。ホームに隣接するかの立地にあってはさもありなん。歩行者専用の地下通路、もしくは、橋上駅舎化に南北自由通路の実現を、との声も実現には安からぬ投資ばかりか何よりも鉄道会社の経営判断が求められ。

踏切を越えんとする中でも焦るは朝の遅刻を気にする子供たち。せめて彼らだけでも。他とは違い、すぐ隣りには駅舎あるに朝の時間帯だけ構内を、なんて。ICカードもしくは特別許可証、もしくは簡単な目印でも支給して。

不正乗車の可能性低いばかりか、目下、小児IC運賃の全区間一律五十円が耳目を集め、子育てしやすい沿線環境の実現を目指す中にあって、企業の社会的貢献、イメージ向上に一役買えるのではあるまいか。まぁ子供たちの為に。

(令和5年8月30日/2802回)