女中

忘れもせぬ、昨年のさんままつりの帰り道。通りかかるは公民館。老齢の身には家路遠く、トイレを拝借せんと中を覗くに若い着物姿の男性が一人。

はて、何を、声をかけるに、これから寄席と。寄席と申しても客一人おらんではないか。聞かば、転居してまもなく、地元にて一席、と催せどもかくの如き有様と。木戸銭位の手持ちはあるけれども、客一人ではやりにくかろう、手拭の一つでも、と義侠心に厚きKさん。そんな話を後日に聞いて。

アルテリッカしんゆり、演芸座二ツ目落語会。しんゆり在住もしくは「らしき」落語家、それも真打ちならぬ二ツ目とは粋なはからい。そこに見かける当人。演目前の枕の話題や公民館の一人寄席、とはならねども。二ツ目だけに呼ばれればどこだって。アキバのメイド喫茶に小学校の出前講座。出向く労こそ厭わねど通じぬは言葉。定番の長屋に女中。そう、女中とはメイド。そんな創意工夫はいづれ必ず。閑話休題。

その公園の入口付近の大木が大型連休に見事な花を咲かせると聞き。木の名やナンジャモンジャ。それ以外に大島桜にアメリカデイゴと普段は目にせぬ品種が。それも緑豊かな本市の北部ならぬ工場に囲まれし臨海部の一角に。なぜに。人の営みに欠かせぬは緑。埋立地、潮風に晒される中にも立派に成長する姿を後世に、と当時の担当らが。それこそがまさに「レガシー」なれど、いつしかそんな経緯も受け継がれず、忘れ去られるが常。

力士の髪結とて。稲毛神社の境内に現存する大銀杏。戦火に焼ける中にあっても新たに息吹を取り戻すはまさに御神木にふさわしく。その門前にあれだけの並木を手がけた当時の担当。そう、市役所前の銀杏並木。それも黄金比の円錐を維持した樹形は景観百選にも選ばれ。それとて本市の叡智を示す証。緑化フェアなど絶好の機会となり得たはずも、事情を知らぬ担当の指示に業者が見事に伐採。覆水盆に返らず、何とも惜しい、と地元の植物博士、ならぬ、元局長。

生態系の不思議やそこに限らず。昔からその獰猛な種族は近くに生息し。絶えず脅かされつつも共存が図られてきた歴史。当時などはそれなりの接触が図られる中に磨かれる互いの免疫。我らが現役時代などは膝つき合わせて丁々発止、とは隠居組の回想。んなエラそうな話を聞かされても実際は。中には不器用なものもおれば、それだけは断じて許さぬとばかり憤慨することもなきにしもあらずなれど、それでも今ほどまでには遠くなかった気も。掴めぬは互いの間、距離感。

いみじくも過去の質問にそのへんの極意記され。公園におけるボール利用を取り上げた野球狂のUセンセイ。本題から脱線、いや、派生して説くはキャッチボールの効能。それは野球に限った話になく、生存の上で大事な心構え、視点であり。市議会の会議録にて「心のキャッチボール」で検索を。それとてレガシーか。

(令和6月5月5日/2851回)