根性

現代人が抱える首肩腰にひざ痛の原因、より正確を期さば「悪化の」原因は姿勢にあり。痛む箇所を庇わんとするに。

ランとて同じ、ほんのわずかな歪みも100km走るに。とりわけ、足首からひざの骨格、軟骨の摩耗なんぞも正しい関節の使い方が出来ればより長持ちとて。靴の中にあるだけで自然と歪みが矯正されて、と薦められしはインソール。

市販の品あれども足裏の形や人それぞれ。計測の上、自らに合いし一品を、と注文するに届くはレース直前。着用するに抱く違和感こそが歪みの証。確かに理屈は分かった。日常のインソールとしてはアリかもしれぬが、いざ100kmとならば。それも、レースぶっつけ本番で。

いや、正しいフォームが継続するに疲労度が軽減されて。なんてことも「ある」に違いなく。が、そこにもう一つの不安。シューズ購入時のインソールを外して入れるにほんの数十グラムほど「重く」。例に倣うはゴルフ。まっすぐ打つべきところたった数ミリの誤差でも距離を打つに大きな差となり。

そう、思い起こさば一年前。見るも無残な姿を晒すに閉ざされし関門。あの挫折感は。されど、人を成長させるは挫折と逆境。この一年間はその日の為にあった、と申しても。のしかかる重圧に。使うべきか、使わざるべきか。仕事もその位の真剣度があれば、違うか。

決め手となりしは販売員。K市議の紹介にて何度か私を訪ねて下さったのだけれども。格好こそビジネスシャツにスラックスなれど、足下は運動靴にちゃんとインソールを。相手に薦めるにまずは自らが納得せねば想いは伝わらず。

ましてや前職はゴルフショップの店員と聞くに。いや、そもそも努力次第で高められる完走の確率とて「絶対」はなく。ならば、縁ありて知己を得し販売員が私の為に特注品を手がけて下さったのだから信じて走ることこそ。

100kmレースの戦歴や4戦2勝なれど、敗戦1回は議長の椅子欲しさに「棄権」したいわくつきの1回であり。私が目指すは記録ならぬ完走。とにかく制限時間内にゴールまで辿り着くペース配分が大原則。が、途中に何かしらのアクシデントがないとも限らず、欠かせぬ「貯金」。

少しづつでも短縮に短縮を重ねるに、残りの距離は歩いても間に合うまでにタイムを稼ぎ。体力が残っていればそのまま走り続けてもよし、あくまでも「貯金」だから。そして、迎えたレース当日。

かつては20℃とされた最高気温も今や30℃を超えるに完走率の落ち込み著しく。コースの名所や二つ。まずは65km地点。緑陰なき灼熱の道から緑のカーテンに包まれるに耳元でのささやき聞こえ。「ここまでよくがんばった、少し歩こう」。誘惑に負けたら最後、完走は遠ざかり。付いた名前が「魔女の森」。

そして、もう一つ、終盤80km地点に迎えるワッカこそがサロマの魅力。ワッカとは原生林。かつては咲き誇りしその花も今や数えるほどしか。エゾスカシユリ。昨年はそこで尽き果て。

当日の最高気温33.8℃。100kmの部の出走3,343人に対して完走1,952人、完走率58.4%。ゴール果たすはインソール効果か、信じて走りし見返りか。いや、最後は「根性」な訳で。第40回サロマ湖ウルトラマラソン100kmの部。完走タイム12時間39分55秒。総合順位934位。

(令和7年7月5日/2934回)