色気
朝の通勤時、発券機の前に無造作に置かれしスマホを見かけ。急いでいたんだろうな。放置すべきか、届けるべきか。
いや、「放置」とは人聞き悪くも依存度が高き今日にあって気づかばすぐに。されど、その数分以内に通りすがるは私が如き善人とは限らず。改札の駅員に届けて「ありがとう」カードを受け取れども、届けられたほうとて画面はロックされとる以上、所有者分からず。
拾得側にしてかくの如き状況にて紛失側となれば尚更か。何せ手段を失うばかりか、相手の連絡先とて全て。冷や汗に違いなく、無事に所有者の手元に戻ったか否か。
さて、Tさんが事務局長を務める団体の打ち合わせ、と申しても事実上の雑務を担うは私にて。一方的な報告後、雑談に付き合うことに。高齢化が進む集合住宅。日々のごみ集積場の掃除は居住者が担うべきも寄る年波には勝てず。
目下、シルバー人材センターの派遣にて掃除を請け負うTさん。利用者の方から声をかけられること少なからず。ねぎらいが大半を占めるも時に蔑む目で見られたりも。が、87歳ともなればそれしきのことは。
んなTさんが相談を受けるはストーカー被害。被害者や80歳の女性。まさか、とは偏見。被疑者や同じ集合住宅に住む高齢の男性。それも独身ならぬ妻帯の身だそうで。これ以上、付きまとわれてはかなわぬ、と意を決し、警察への被害届、否、相手の奥方に直談判に臨んだ結果。
相手の反応や詫びるどころか。原因は汝の服装。年齢にそぐわぬ格好をしていれば中には物好きな男とて。つまるところ、挑発する側に「も」、いや、「こそ」責任が、とキッパリ。いや、確かにTさんから見てもそこが気にならぬか、といえばウソになり。所感やいかに、と私に求められても。
齢を重ねるに周囲からそんな目で見られがち故、よりこまめな手入れ、清潔感を保つは相手に好印象を抱かれやすく。と申してもやはり何かと億劫であることも。色気とて年齢は関係なく。何歳になろうとも相手の目を惹かんとの欲こそ否定されずとも、まぁ。閑話休題。
各種団体からの予算要望の前半戦を終え。団体の一つに犬猫の愛護ボランティアあり。今やペットは家族の一員なる価値観が浸透を見せる一方、嫌悪感を抱く人とて。ペットを巡る問題は少なからず。独居の身にあって寂しさを癒す、心のよりどころとなりし存在。独居高齢者のペット需要が高いとか。
が、飼い主が飼い主だけに突然の死亡や長期入院の際に残されしペットの扱い。孤独死の現場に死骸がそのまま、なんてことも。その為の愛護センターなれどそこに立ちはだかるは所有権。放棄されねば勝手は許されず。意固地な飼い主や死亡後の相続人が見つからぬ時などペットのみが放置されるに。
そんな事態を未然に防ぐ仕組み。突然の事態に慌てふためかぬよう、せめて関係者による情報共有だけでも、と。
複雑な構図はそこに限らず。書店にて見かけし一冊はあの先生のエッセイをまとめた新刊。本のタイトルはズバリ「患者と目を合わせない医者たち」。
(令和7年7月10日/2935回)
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