破顔
世の中に間の悪い人、いや、間の悪い「時」はあるもので。レース途中の着信や地元の県議。「会合に姿が見えぬが、今どちらに」。そのままを告げるに、「今回は特段に咎めぬ」と。主従関係があるものでもなし、私がどこにいようと私の勝手。少なくとも貴殿に許しを請う理由なんぞ。いや、そこには伏線があって。
数日前に行われた党市連の大会。党の役職は全て辞した身とあらば扱いは一般に同じ。出欠はあくまでも任意、委任状にて済まさんとするに県議から。んな身勝手が許されるか、執行部側にあらざれども出席は義務、とばかりに。それとて彼なりの気遣いに違いなく。それで顔が立ったか否か、恭順示しことへのお返しとのことらしく。
会合からは姿くらませども支援者は怠りなく。末期がんを患いし彼にこの一冊を、と使い走りを頼まれて訪ねしYさん宅。道路に面した庭に広げられるは。収穫から一か月、ぼちぼち加工品が出回り始める頃であり、中でも人気はそちら。
定年後の趣味というか、腕自慢多く、わが自慢の一品を、と提供されること少なからず。今や減塩、ハチミツ入りが高級品として市販に出回る中にあって梅干しとはかくあるべし、やはりあの口をすぼめるような塩加減こそが。食べてみるか、と促される前にこちらの手が伸びて。種はそのまま庭に。みやげに数粒をいただくも来年はありつけるかどうか。
老若男女を問わず愉しめるがそちら。全盛期に比べれば隔世の感は否めず。不肖私が区協会の会長にて普及図らんとするも時代の波に抗えず。が、そんな逆境下にあっても顔見せるは真の愛好家の証。巧拙は二の次、悲喜こもごも、白熱の一戦がそこに。そう、ボウリング。
3ゲーム合計を競いし規則なれど、終了に時差。それも少なからぬ差が付くに。やはりマイボウル組が早く、差はストライクの数の違いか、とave215のKさんに聞かば、それ以上、あの余韻に浸りしガッツポーズ、自己陶酔の長さに比例する、と。
あの喜怒哀楽はゴルフのパットに劣らず。その興奮こそがリハビリにも、なんて。あの倒れそうで倒れぬ最後のピン。落胆のまま、レーンに背を向けて戻らんとするに上がる歓声。もしや、と振り向きて見せる破顔、恍惚の表情。それが最後の1ピンとあらば。
そう、私と同じレーンとなりしTさんは少年野球の元審判長。当人の腕前は私もよく知るところであり。その一投を背後で見守るに全ピンが倒れてのストライク。が、振り向きざまに、今のはノーカウント、とゼスチャーを見せる本人。
いや、確かに最後に一呼吸おいて倒れし7番ピンに違和感はあった。が、倒れた事実には相違なく。ましてや、そこで得る1ピン、ストライクゆえスコアでも10以上は違うはずも。そこに窺い知る当人なりの美学、というか人柄。そんな人物に指導される子供たちは幸せではないか、と。
(令和8年7月15日/3007回)
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