言わぬが花

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす...」とは平家物語の一節。「おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし」と続く。
前回の衆院選で渡辺喜美さんという衆議院議員が落選した。親子二代で栃木に築き上げた王国も50年で陥落。その父君が野党の甘言に流される有権者を称して「毛鉤で釣られる魚」と言った。言い得て妙、けだし名言と思うのだが、昔から「あれやります」「これやります」の「やります」候補は少なくない。
そりゃおカネをかければ老人ホームや保育園の整備は進むし、その信憑性は兎も角も間違いなく有権者にはウケる。まぁ最近は薄っぺらい公約は有権者も見抜くようになってきたから最近は手口が巧妙になって「あれをこうします。いついつ迄に」と具体性を帯びてきた。さりとて、一部の有権者が耳触りのいい公約に惹かれるのも事実。
が、それが予算削減ともなればどうか。話がまるで違う。予算を削るってのはほんとしんどい。なんだって敵が多いからね。これまでの利権が失われるってことだから相手の抵抗も執拗。「こんどの選挙で絶対に落としてやるからな」って、そんな脅しを受けながら「やれるもんならやってみろ」と気概で跳ね返すしかないんだけど、そんな追及も過去には随分請け負ってきた。やはり今の世代の課題は今の世代で片付ける。将来世代に禍根を残しちゃイカンと思うんだ。
そんな「やります」候補、新人ならば大目に見ることもありそうだけど現職であれば詐欺師に近い。都合の悪い話は聞きにくいもの。それは政治に限った話ではなく、会社とて上司の機嫌取りに徹して都合の悪い話は隠す。でも、そういう話こそ言わなきゃイカン。それをどう受け止めるかは上司の度量ってやつで...。
センセイの仕事は行政の監督。公務員は時に余計なことはやらない風土があるから「そこはおかしい」「こうすべきではないのか」と苦言を呈し、嫌われつつも改善を促すのが大事な役目なんだけど、選挙に勝つ為には「朝の駅頭(辻立ち説法)」「夜の会合」「冠婚葬祭」の三大行為が必要なのだそうで...。