特別席

朝5時から夜8時までのぶっ通しだから肉体的に精神的にもかなりしんどいのが選挙。選挙カーで手を振っているだけじゃないかって?んなことはない。今はそんな時代ではないと辻立ちや駅頭が中心の選挙戦。仮に助手席とはいえども有権者から「見られている」から神経がすり減って疲れてしまう。そんな時はワンボックスの伴走車の毛布の置かれた最後列のシートが抜群に居心地がいいんだよナ。
運転手は私と同世代の気心の知れた面々だけに「ぼちぼち休憩でも...」と打診すれば、「休みなよ」と優しい一言。「ちなみに当時、センセイはほとんど助手席に乗っていなかったぞ」と続いた。聞けば「行って来い」と言われて候補者不在の遊説が多かった上に、別な証言によれば選挙カーの後部座席の更に後ろには特別席があったのだそうで。そりゃもう完全な道路交通法違反なのだが、尚且つ、「特別な」座席自体は立派なれど即席で作ったもんだから慣れない運転だと座席が横転して...。
かと思えば、途中下車での辻立ちは数分間、貫禄十分のセンセイが街中でタスキして演説するなんて慣れないことをやれば鬱憤も溜る。で、おらがセンセイの場合は途中に抜け出して睡眠ならぬ大好きな趣味...そう、ゴルフ。で、本来ならば隠れて行くべきところを本人の性格が性格だから駅頭で見かけた候補者に車の窓を開けて「ごくろうさん」と声をかけたなんて話は地元の有名な語り草。そんな他人様に阿らぬ姿勢、有権者に媚びない姿勢は決して真似出来るものではない。
そんな存在感たっぷりのおらがセンセイだが、私の初陣時は後援会長として大活躍。当時は私の候補者の資質とか人間性以上におらがセンセイの陣頭指揮に村が動いた。早いもので既に四期目、おらがセンセイも特別顧問に退かれて、後任の後援会長に選挙を任せたまではいいけれど...。どうやら手持無沙汰にて本人は趣味のゴルフの相手探しに奔走。「山崎君はこのへんの日程で都合はどうかね?」とこちらまで誘われて「センセイ、それどころぢゃないんだけど」などと反論も出来ず。そんなセンセイに鈴を付けるのは後援会長の任務。
投票日当日の開票時には選挙速報のテレビ番組以上に開票所の生の情報が最も早い。当日は各陣営から立会人を選出するのだが、開票所の中でもその立会人は開票を最も間近で見ることが出来るから立会人からの情報をいかに早く事務所に伝達するかが陣営の腕の見せ所。昔は双眼鏡にてサインを確認するとか、トイレで紙を渡すとか様々な連絡方法が考案されたそうだが、今は情報公開が進んで一般人もかなり近くまで立ち入りが許される。