特選和牛

正月に「背伸びして験(ゲン)を担ぎし初御空」と詠んだ。迷信深いもんだから元旦こそこじつけでも何か縁起を担ぎたくなるもの。ならばいっそ神仏の御加護にあやかるべく神社に...というよりも年間の出番が少ないとやらされていたりもする神社の御奉仕。所詮はそんな不純な動機で出仕する上に、境内では本殿への参拝よりも支援者への挨拶が先なのだから御利益も薄れる訳で...。
おみくじなんてのは心配の種を増やすようなもので今さら金運や学問に「大吉」などあっても...いや、要は何事も都合よく解釈するってのが大事かも。「厄」などというのもその手の類だと知りつつもどことなく不安で後厄となる昨年は神社にて祓いをしていただいて大過なく過ごせたのだが、辞めた途端に...と恐怖心から今年「も」厄祓いを終えた。が、そんな不純な動機とて正月から御奉仕に励めば「当然ながら」御利益もある訳で...。
年始挨拶回りの際に「まぁどうぞ」と誘われて「後の予定が」とやんわり御辞退申し上げるつもりが、「じゃあ、少しだけ...」と、ある御宅にて正月のおせち料理をいただいたんだけど〆の一品が何とも贅沢な和牛ステーキ。以前、といっても二十代の頃に三大和牛の中でも最上級とされる産地の名店にて着物姿の女性が焼いて下さる「特上」肉をいただいた(勿論、自腹)んだけど甲乙つけがたく。
ということで、その仕入れを聞けば、山形県羽黒産の「特別」だと。そう、以前は羽黒牛として特産扱いだった自慢の和牛も頭数の減少からか県内産は米沢牛以外は山形牛として総称化されているそうで。それがブランド化されることで信用が付与される意義こそ否定せぬものの、近江牛と米沢牛の違いなど分かるはずもなく。旨いもんは旨いとしか言いようがないだけに産地表示なども過信は禁物。それに固持するあまりに本来の目的を見失いかねない。
産地表示といえば数年前に偽装が発覚した高級料亭も確かどこぞの和牛を「但馬牛」と偽っていたとされるが、果たして客はどこまで気づいていたんだろうかと。頭数が少なければ時に仕入れが困難な日もあるだろうからあとは料亭ののれんと仕入れ人の腕を信用いただいて料亭自慢の特選和牛とでもしておけば良かったのではないかと思うのだが、背伸びし過ぎちゃったんだろうナ。まぁ、産地偽装以外にも食べ残しの再提供や賞味期限切れの販売も重なっていただけにもう立派な確信犯。
さて、このブログにも登場する人物の仲介にて知り合った御仁が初当選以来ずっと贔屓にして下さるのだが、御仁曰く、私の地元にとびきり上等な肉を提供してくれる店があるのだとか。「こんど連れて行ってやるからな」と。そんな言葉だけはしっかりと記憶に残るもの。以来、会う度に「ぜひ、こんど」-「おう、こんどな」が挨拶になっていたんだけど、「こんど」と言いつつ、既に数年が経過。別にゴチになるのが目的ではないのだからと勝手に抜け駆けを画策すれば「特別」仕入れじゃないと意味が薄いのだそうで、「まぁ待て」と。