一億総活躍

他がカジュアルな私服である以上、いるだけで十分に目立つ。紹介不要とお伝えするんだけどそれがかえって重圧になってやいまいかと気が気でならぬ。「本日は来賓にセンセイが...」と運動会のひとコマ。依然として保育園入園を巡る相談は少なくない。
やれ一億総活躍だとか配偶者控除の廃止だなどと在野に埋もれた有能な女性の社会進出に私を含む世の平凡なオジサンたちの居場所が失われてしまうのではないかとの危惧は絶えず。まぁそれは横に置いておくにせよ、遅々として進まぬ受け皿整備。本市の民間保育園の新規参入が四次募集でもおぼつかない状況だと聞いた。用地の取得難に慢性的な保育士不足、追い討ちをかけるが如く隣接する東京都に矢継ぎ早に手を打たれ、四面楚歌の状況にいかなる道を選ぶべきかと市に迫ってみたものの...。
単なる受入枠の拡大は産めよ増やせよの少子化対策に同じ。4月入園の0歳児枠に申込が殺到する現状を見るに育児休暇制度のフル活用でもう少し平準化が図れるのではないか、0歳児は1~2歳児に比べて手間がかかる分、人数あたりの保育士の数も多い。そのへんの融通が図れれば他に余裕が生まれて...と園長。育児休業給付金はあくまでも雇用保険で賄われるといえども職場には穴があく訳で、長期休暇に注がれる社内の冷やかな視線にどことなく負い目を抱きつつ、休暇満了を待たずして職場復帰を果たしてしまっては親の愛情を必要とする子供は忍びず。
一億総活躍といえば目玉の一つに同一労働同一賃金があって、それが世界標準なのだとか。御恩と奉公の主従関係こそ雇用慣行の最大の特徴と信じてやまぬ。賃金はあくまでも労働の対価、解雇も当然の欧米文化と賃金以外に各種手当や退職金が常識のわが国では根本的な価値観が違う。慣習の全く異なる諸外国の事例を称賛して真似るべきだとの言い分にはより慎重にあるべきではないかと。給与が正規並みに上がれば非正規とてそれなりの生活が...との期待とは裏腹に正規の給与が非正規並みにされたらかなわん、解雇をしやすくする為の法改正は政府の陰謀だなどと懐疑的に見る向きもあるようで...。いつぞやもあったな、そんな話。
非正規の増加は派遣を認めた政府の責任との批判。先の見えぬ経済情勢に低迷する業績、期待外れの採用に不当解雇などの訴訟リスクを加味すれば慎重にならざるを得ないのは当然の経営判断。であれば柔軟な雇用形態を認めようとそれで利を得た者も居たはずで、期せず結果としてそうなることはあったとしてもそれを目論んでやったなどとこじつけられては為政者も些か気の毒ではないかと。
このたびの定例会における同一労働同一賃金に関する意見書の採択を巡る議論では国の法整備の際に待遇の「均等」とされた文言が「均衡」になったのが気に入らぬとかで一部の会派が反対となった。されど妥協や協調がなければ会社どころか社会の中で上手くいかん。それとて後退する訳ではあるまいし一歩前進なのだからそこまで意固地にならずとも...法整備以前に為すべきことも少なくない。
(平成28年11月1日/2301回)