出世城

出張の旨を告げて行先すら聞かれぬ関係がおよそを物語っているんだけど、夫婦関係には適度な距離感があったほうが...んな訳ないナ。
当日の出張こそ予め伝えておいたもののまさかの敗戦に生じた空白の一日。午後の移動を予定していただけに日中は仕事をこなしたものの、夕刻を迎えて帰るに帰れぬ家路は家出少年の心境。幸いにも翌日は別の出張予定があったもんだから何とかやりくりして野宿だけは回避出来た。
大都市特有の課題克服の為に設立された政令市議員連盟、通称「議連」ってのがあって、五大市に次ぐ古参である本市は人口や若手中堅の多さも手伝ってか五大市に劣らぬ存在感を示している(はず)。その総会が政令市の持ち回りで開催されていて...。
土地柄も違えばその背景も世襲に徒手空拳、裸一貫もあれば私のようにコソ泥が如く前任の地盤をちゃっかり拝借したようなのまで様々。その歯車が一つでも狂えば巡り合わなかった数奇な縁にそれぞれが背負う苦労、同じ時代を同じ旗の下で生き抜いてきた連帯感が重なり、一年ぶりの再会はさながら同窓会の様相。
震災の翌年は復興支援を兼ねて仙台市での開催などと状況に応じて選考されるんだけど昨年のさいたま市に続く今年は...。そう、今年が真田ならば来年は井伊直虎。名は名でも女城主が主人公。その舞台となる浜松城は家康公ゆかりの城にて出世城としても名高く、国自慢を兼ねて浜松市の鼻息が荒い。
懇親会こそ自腹ながらもそれ以外は恥じぬ内容にて敵情視察として計上する市もあるとか。話題の政務活動費、いわゆる政活費の使途基準は自治体で異なることが話をややこしくしている一因。まぁ本市などは給与から「勝手に」天引きされる団費の対応にて自腹の研修である以上は視察に付き合う義理もない訳で。
紅葉が見頃を迎えた山々を車窓から見ながらの鉄道旅に心が癒される。出発の合図は汽笛。それに見送られて郷里を後にした人も少なくないはず。ベテラン車掌が奏でるハーモニカは場を和ませ、名口調の沿線ガイドは趣向を凝らした内容で客を飽きさせない。
折角の機会を愉しんでもらいたくてねと車掌。過去に全国各地で活躍した蒸気機関車が今も走り続ける大井川鉄道には古きよき昭和の時代が今も残っている。かくいううちの息子なども鉄道部らしく将来の夢は鉄道の運転士だとか。
そう、私も知らなんだが、本市はその義務教育課程においてキャリア教育に力を入れているのだそうで、つい、こないだなどは清掃の職員が学校を訪ねて仕事を紹介。透明なスケルトン車両の披露に歓声が上がり、その体験談に熱心に耳を傾ける生徒たち。
「なぜその仕事を選んだのですか?」との質問に「誰もが嫌がるゴミを片付ける姿に感銘した」ことが動機だとか。それが想定の模範解答であるにせよ、その言葉に揺れ動かされてその職業を目指すことにした級友がいると息子に聞いた。少年時代のあこがれや夢ってのは人を大きく成長させる。
(平成28年11月5日/2302回)