酒豪

小心者ゆえ目上の人の着信にすぐ動揺してしまうんだけど、正月早々K兄からの着信があった。それも起床前の早朝にて恐る恐る折り返せば「今日はオマエが年長者にて抜かりなきよう」と釘。たったそれっぽっちなんだけど、んなことを言われるとどこか頭の片隅に残るもので最後の火の元の確認も怠らずに。ほんの一言、されど一言、さすがK兄である。
神社の御奉仕などといっても所詮はそちらの収益になる訳で活動資金になるのだから決して自慢出来たものではないんだけれど恒例のだるま売りにてこの正月も終えた。氏子は地元の顔役、律義な方々にてこちらの姿を見かければ「暮れはわざわざ」と向こうから。こちとら手抜きの名刺を郵便受けに投函しただけなのだが、その様子を他人様が見れば何やら仕事の御礼に見えなくもなくそんな副次的効果は正直者が報われるイソップ物語の「金の斧」に...違うナ。
さて、おらがまちの銘品に「禅寺丸ワイン」ってのがあって、何かの折に観光協会のブースにて当然の如く1本購入すれば、さっきのHセンセイは2本だったなどと。それが本当かどうかなど確かめる余地なく、ならば私も負けじと...。そんな授業料のおかげでこちらは付き合わずに済んでいるのだが、名入りだるま注文の格好の標的はやはり。まずは「応援してます」なんて囁けば「まいどあり」は確定。あとは大きさだけなんだけどどこぞの好敵手がこのサイズだったなどとチラつかせた結果か、最上段には天井サイズの名入りだるまがズラリと並んだ。
選挙とて毎年あるはずもない訳で片手は下らぬその出費は別のところに向けられるべきではないかと思うのだが、まぁ上客ゆえにこれ以上は言わぬ。格下の市議なんぞはちゃっかりしたもので私に右へならへで横一線、隣村のOセンセイなどはザキヤマよりも一つ下のサイズで...などと謙虚でよろしい、というか人様をダシに随分倹約しとる訳で。そんなこんなで正月なども御奉仕にかこつけて雑談に興じているだけなのだが、正月といえばやはり...酒。
本市にも大師河原の領主と江戸の儒教者の酒飲み合戦に端を発する風習が今も残るが、いつぞやの神社の旅行の際にバスの車中でワンカップ大関8本、乾杯後のビールに夜席の酒を足せば3リットルは下らず、それを私一人で呑んだというのが語り草というか酒豪伝説として定着しつつあるようで。でも、3リットルってのは1升半だからね、目撃者の談によれば「われこそは酒豪なり」だとか、大関片手に「これこそが日本の高度経済成長を支えた酒だ」などと豪語してたってんだから始末に負えぬ。
その一人、Mさんによれば自ら酒豪を自称してそこまで呑んだヤツは初めてだったと振り返る。遠慮気味に自重する周囲を横目にならば私が...と勧められるがままに頂戴していただけなんだけど、翌朝は何事も無かったかの如くケロリとしていたというのだから、さしづめ話半分、せいぜいワンカップ3~4本にビール少々の半升五合あたりが妥当なはずなんだけど同席者が否定せぬところを見るに...。古今東西、世に酒席の失態は数知れず、ちゃんとオチがあるんだけどそりゃ内緒にしとく。本年も御贔屓に。
(平成29年1月5日/2316回)