ねじれ

家人曰く、寝不足の前夜、車中のラジオ実況中継そのままに帰宅後もテレビを前に釘付けで戯言をつぶやいていたとか。人気選手の加入辞退に散々の下馬評を覆すかのような進撃ぶり。やはり日の丸を背負えば気迫も違うんだろうけど、ツキとノリだけではいつまでも続かん訳で...。勝てば官軍、勝ち試合に許されるミスは油断となっていつか足元をすくわれかねず、反省が無くば重要な局面で取り返しのつかぬ敗北の可能性も。
両者に求められる資質は似て非なるものにて名選手は名監督ならず。その采配に釈然とせぬこともなきにしもあらずで短期決戦とあっては采配の妙が致命傷となりかねぬだけに勝ち試合といえども反省なくして成長なし。いや、資質云々以前にスター選手を代表監督に据えるそちらの采配こそが元凶だったりもして。そんな野球評論は辛口なれど市政はどうか。
監督さながらに学歴に秀でた教師が名伯楽とは限らん訳で何よりも自らの尺度で物事を見れば生徒がつまづくツボにも気付くはずもなく、やはり挫折とか壁なんてのはあったほうが幸せかも。公立の小中学校は「市立」ゆえに採用は市なんだけれどもその給与負担は県と国。雇い主と払い主が別とあっては顔向きも定まらぬだけにそんな歪な「ねじれ」の是正を求めてきた結果、新年度から県の負担分が税源とともに政令市に移譲されることになった。いわゆる県費負担教職員の市費移管ってやつなんだけどその額およそ560億円にてその分が上乗せされて過去最大規模となった本市の一般会計当初予算は7,088億円也。
さて、全四日間の予算審査特別委員会を終えた。その辛口論評、諸氏の通信簿の前にまずは全体を俯瞰して大雑把な解説をしておかねばどこぞと同じ轍を踏みかねぬ。ということで本日は予算の概要から。そもそもに入るを量りて出を為す、つまりは歳入に見合うような歳出にするのが財政におけるイロハのイ。歳入の中には市債ってのがあってこれは当年度の事業費を賄う為に市が債権を発行して資金、いわゆる現ナマを調達する金額。
されど借りたカネはいつか返さにゃいかんから過去に発行した市債の中でも当該年度に満期を迎える分については返済せねばならずこれが歳出における公債費と呼ばれるもので、市債よりも公債費が大きい、つまりは当年度に調達する額よりも返済する額が多ければ必然的に市債残高は逓減していく訳でこれがプライマリーバランス。更に言えば公債費は既に発行した市債の返済分だからその額は予め確定していて全体を黒字とする為には市債発行を抑制するしかない。
ちなみに新年度の予算を見れば市債は570億円、公債費は733億円(利子分136億円)だからそのへん表向きはあくまでもまずまずに見えるんだけど。毎年度それだけ多額の返済資金を用意するのは酷だから償還まで計画的に原資を積立てることを目的に作られたのが減債基金。まさに読んで字の如く市債の償還時における市の負担を軽減するもので満期償還を30年として翌年度以降は30分の1づつが積立てられるんだけど、これがそれなりの額になるだけに寝かせる位ならば...とあれこれ画策される訳でそのへんが別な「ねじれ」に。
(平成29年3月15日/2333回)