道具

日本を代表する企業の工場誘致ともなれば経済効果は測り知れぬ。候補は二つ、片や立派な料亭で知事や市長の出迎え付きの大宴会、もう一方は渋茶一杯とおしぼりのみの応対に名経営者の判断は...。一代であれだけの企業を作り上げた手腕は幸之助翁と並ぶ昭和の双璧。会社の大小、業績云々以上に多くの日本人に夢を与えた功績、未だ遺伝子が根付く企業風土に語り継がれる逸話の数々。
そんな名経営者が還暦を過ぎて夢中になったのがこちら。「以前はあれほど忌み嫌っていたものを...」と部下がこぼせば「時代が違う」とワンマンぶり。確かに金銭的な支出は決して小さくないとはいえ何かと槍玉に上げられるのは些か不憫な気がしないでもなく。同氏のホームは低料金の河川敷だったと本に読んだ。
そこまでの時間的余裕に金銭的な支出、いや、それ以上に洗濯物が増えるとあっては眉つり上がる細君。そんな下々の事情も知らぬ御大尽に「明日はどうかね?」と聞かれて返事に窮することしばしば。歴こそ議員歴に同じなれど、回数は年間に片手程度。現職時代から週2回は欠かさなかった前任者からゴルフが上達せねば仕事は出来んと道具までいただいてしまったものの、まさに時代どころか身分まで違うのだから。
得意種目こそ水泳なれど運動神経とて他に劣るものでもなく、全般に人並み以上にソツなくこなせるはずがこちらだけはなぜか歴と回数と腕の上達が「全く」比例せず。およそ御伴のはずがそこまでの腕もなく、尚且つ、遅延行為は前後に失礼。何本かを持っては走り、打っては走るようなほんとみっともない行為の連続なんだけれども私の腕前は地元でも広く知られたところにて。
上達せぬ上に御大尽の御伴とあっては安からぬ料金にすり減る神経...でもないナ。そんな悪循環を見かねてか地元のTさんが御一緒にどうかと誘ってくれた。そんな支援者がいて下さるってのは何よりもの宝、低料金の代償は片道3時間ながらも不名誉な評判を覆すべく早朝5時に起床して...。
が、やはりパッとせぬスコアにモノが合わないのではないかと同氏。それも御大尽が実際に使用しておられたものだから当然のことながら高価であって高価な道具ほど「いい」道具なんて先入観も手伝ってかケチのつけようもなく、野球とてバットを選ばぬ器用さ位はあるから道具よりもまずは腕が原因と「ず~っと」思い悩んでいたんだけれどもさすがにここまで深刻となると完全撤退か起死回生の一手か。
ということで店を訪ねて事情を話せば、「この道具は上級者用にて御客様には...」と。で、実際に何本か、というよりも何本「も」試打してみたんだけれどもその真摯な対応に納得の解説。が、何よりも押しつけがましくない姿勢に店員が大学時代の親友に似ていたことが最終的な決め手となった。
世の中、物事の動機は不純で、きっかけは些細なことが往々。後援会のゴルフ大会が迫るも100キロ走破の次なる目標は...。
(平成29年7月11日/2362回)