恐竜

水入らずの会話を交わした夜に最愛の妻が永久の旅路につかれたと聞いて、ありし日を偲びつつ、惜別の一句をそっと手帳に記した。輪廻転生、いつか迎える死。一般的に忌諱されがちな死と向き合うことで教わることは少なくない。虐待やイジメが横行する原因の一端もそのへんにあるのではないかと。今年も旧盆が近づいてきた。迎え火こそ炊けぬながらも御先祖様に想いを馳せる慣習を大切にしたいもの。
さて、小学生の頃は水泳部(しかも主将)だったもんだから午前中はプールで部活動、午後はそのまま海で...。ゆえに私にとって夏といえば海なんだけど、妻に言わせると夏は恐竜なんだそうで、確かに言われてみれば大恐竜展なんてのもやってるし、ジュラシックパークの再放映もあったりして星空観測に並ぶ夏の風物詩かも。大自然の神秘や太古の歴史に想いを馳せるのも一興だけど、それを制御しようとするのは高慢でいかに愚かなことか映画が教えてくれる。
大自然の猛威、相次ぐ各地の豪雨被害。中でも7月5日に九州北部地方を襲った豪雨災害は国の激甚指定を受けたばかりかその後の台風も重なり被害は深刻。街頭での救援募金活動には多くの方々から厚意が寄せられた。これまでに縁なくそちらの土地勘は薄いのだけれども福岡県朝倉市では当日の1時間雨量は過去最大となるほか例年7月の月平均をゆうに超える雨量をたった1日で記録。近年の集中豪雨の特徴は積乱雲が帯状に連なる線状降雨帯で今回も海面温度や梅雨前線等の複数の悪条件が重なりもたらされた、と分析されている。
報道によれば元々林業が盛んな地域にて土石流に含まれる流木が被害拡大の一因とされるも林野庁の調査では樹木の種類や間伐の有無による違いは見受けられず、森林の保水力の限度を超える記録的な雨量に加えて真砂土と呼ばれる砂質土が表層崩落が多発に繋がったと見かけたが、花崗岩が風化した砂状の地質は平成26年8月の広島土砂災害の被災地に同じ。
さて、本市。各地での記録的な雨量に相次ぐ被害を受けて、多摩川と鶴見川の洪水避難地図、いわゆる洪水ハザードマップなるものを改定。およそ200年に1回程度とされた想定雨量を1千年に1回程度へと見直しを図るとともに河川の氾濫による浸水想定地区を公表することで注意喚起を促すというもの。
それはそれで結構なのだけれども河川の氾濫に限らず身近なところでも局地的な集中豪雨に伴う冠水被害が見られ、そのたびに雨水管の径を太くする処置が施されるもおいそれと出来るものでもないばかりか対症療法にすぎず。雨水の地下浸透は自然の原理、地方では限度を超えた雨量に地盤が緩む構図だけれども、こと開発が進む都市部においては表層がアスファルトやコンクリートだったりするものだから道が河川化したりもして...。
そんな事態を回避する為に調整池や浸透ますなどが減災の緩衝役として期待されるも浸透ますなどは思うように普及が進まぬらしく、その原因はどこに、今後の対応はいかにすべきか。秋の決算審査特別委員会に向けてこの夏の自由研究はそれで。
(平成29年8月8日/2369回)