食欲

日々外で遊び呆けていたもんだからカロリーの消費量は他にひけをとらんのだけれども食い意地が張って消費以上に摂取過多とあって苦手種目は持久走。なんでこんなガリ勉の後塵を拝せねばならんのかと。ゆえに最後尾の胸内もよく分かる訳で今年も一緒に走ることになった。区少年野球連盟主催の新春マラソン大会。学年別個人対抗で記録会を兼ねる。
全学年と御一緒しても「たかだか」十キロ程度にて然したる疲れも残らんのだけど、何よりも後の予定が目白押しとあって長居は出来ぬ。不本意ながら最初の学年のみ...と挨拶しかけて野次が飛んだ。「えぇ~~!」、オレたちの学年とは走らんのか、遺留の意と解釈することも出来ようが、逃げるとは卑怯なりの挑戦状に聞こえなくもなく。最初の三年生に続く四年生も御一緒して次の予定に駆け込んだ。
吉日選べば必然的に日時重なる同僚諸氏の新年会。団長なんてヘンな役職を負わされているからその動向は余計に注視される訳で、オレを軽視したナとひがまれても...。全て回るにしても到着が余興の最中とあっては司会者泣かせでかえって失礼。古株、新人、副団長のいづれを選ぶか。一目置かれる議長経験者が順当なんだろうけど、派閥の親分とか時の人ならば支援者は固定客多く、権力に群がる連中も上乗せされるから来賓が多少欠けようとも大勢に支障なく。ならばいっそ新人のほうに...。
そう、かねてより気になっていた一冊「院内選挙」(久下部羊著)を読んだ。大学病院の院長の突然死に伴う選挙を描いた医療小説。オビには「医学部で一番偉いのは何科の教授だと思うかね?」とさもありそうな台詞に内科、外科、眼科の権威に弁舌冴える若手教授が我こそはと御託を並べるその御口上が何とも。世間の常識とかけ離れたその価値観の真偽やいかにと疑問を呈してみても現役医師だからこそ描ける本音の医療小説とあっては...。
ワイン仲間に現役の若手医師が居られて年に数回を御一緒させていただくのだけれども普段聞けぬ話に教わることが少なくなく。あれだけの偏差値社会をくぐり抜けてきたのだからそちらは申し分なさそうだけどセンセイの敬称に無意識に生まれる優越感、が、そんなセンセイ方が日々対峙するのはビョーキの方々だけに息抜き欠かせず、勝ち組の代名詞も実態はどうか。私が独断と偏見で選ぶ話のネタの御三家は医者に警察、そしてやはり最後は...。
さて、医師会の賀詞交歓会。当日は御長寿を迎えた医師らに対して各種の功労賞が授与されるんだけど、社会貢献が顕著だった医師に対して贈られるプロボノ大賞。今年の受賞は川崎南部摂食嚥下・栄養研究会なる団体の代表、中岡康医師。在宅医療の必要性が叫ばれる昨今において往診以上に必要なことは寝たきりにさせぬこと、その為には「食」だと。健康長寿を「食」で考える市民講座を開設された功績だとか。
私の拙い経験則によれば病床に伏せる相手の命運を知る指標の一つに食欲があって、旺盛ならば治癒に向かう事例が多く。やはり生きる根源は食にあるのではないかと。
(平成30年1月20日/2406回)