民泊

空き店舗の次なる借主に世の隆盛が窺い知れる。ひと昔前であれば遊技場、近年ならばコンビニか進学塾あたりか。おらが駅前の居酒屋の撤退後、暫くぶりの新たな店舗はスポーツジム。目立つ「24」の看板も終電後にバーベル上げているヤツなど...いや、分からんナ。
コンビニ然り、いかに夜の需要に対応するか。欧州を中心にナイトメイヤーなる語が話題だそうで、直訳すれば、そう、夜の市長。別に選挙で選ばれるものでもなく、いわゆる夜の顔役的な存在として昼の行政との仲介役を担うのだとか。夜の需要に合わせて模索される早朝深夜の運行。駅迄のバス依存の方々の為に始発とまではいかぬまでも多少時刻を繰り上げた早朝便を求めた返答が組織の都合にて実現不可だったと聞いた。
そりゃ「特別な」時間帯なのだから無償とはいわぬまでも需要を見据えた上で割高な手当をぶら下げるとか経営側の創意工夫で壁を克服出来そうなもんだけど「前例がない」などと寝言ぢゃあるまいし理由にならん理由で検討の余地無しなどと拒まれては...。時代を読めぬ組織は衰退の一途を辿るのみなどと手厳しい論調で代表質問の前文に含めておいたのだけれども私鉄のダイヤ改正に合わせて新たな動きが見られそうだと小耳に挟んだ。
さて、モノの値段は需要と供給で決まる。ゆえに増える需要に供給の枠を広げれば値段は自ずから...。僻地のマラソン大会などその典型でここぞとばかりにつり上げられる料金に泣く泣くの予約。新たな宿泊施設を整備するにも年間を通じてそこまでの需要が見込めぬ訳で。一夜のみゆえ贅沢は言わぬ、シャワーと布団だけあれば...。そんな需要と既存物件の有効活用という供給側を結びつけた功績、機会を見出した発想は阻害されるものでもなく。
が、黒船襲来に客奪われかねぬ不安、治安悪化や犯罪の温床になりかねぬ懸念に支配下におきたい役所の都合もあってか国において住宅宿泊事業法なるものが作られて、いわゆる「民泊」の届出が義務化、受付番号を交付されねば仲介業者による取次が困難になる他、無許可の営業施設に対する罰則強化と立入り権限が付与されて市町村が担う役割が大幅に増した。
法の趣旨を見れば「届出制度を設けることで業務の適正な運営を確保しつつ、国内外からの観光旅客の宿泊に対する需要に的確に対応して来訪及び滞在を促進する」と明確に謳われていて...。外国人観光客による経済効果は垂涎の的、されど、価値観を異にする連中の眉を顰める行為には警戒感も根強く。一部に報道される物騒な事件も民泊にあらずとそのへんありうる話にてヘンなバイアスがありそうな気がしないでもなく。
規制少なく余計な介入は厳に慎むべしというのが従来の立ち位置にて民泊の対応に関する質疑をじっと聞き入っていたのだけれども、互いの信頼、カギはどこぞにあるゆえとの牧歌的な時代も今は昔。悪貨が良貨を駆逐する事例は枚挙に暇なく、やはり善意が勝る社会でなければならんと。
(平成30年3月1日/2414回)