前文

誰もが一度は耳にしたことがあるあの旋律を含む名曲の余韻に浸りつつ帰路についた。寝ても覚めてもベートーヴェン、代表作は「ベートーヴェンの生涯」、かの文豪ロマン・ロランの賛辞を何よりも作曲家本人が喜んだ逸話が残る。久々にグリーグのピアノ協奏曲を聴いて当人25歳の作品と初めて知った。
目立ってなんぼのこの世界、会派を「代表」しての登壇はまさに晴れ舞台であって絶好の宣伝機会。喉から手が出るほどと思うかどうかは別にして団の了承なくば軽々しくは立てぬ訳で...。そこで名を馳せずとも地元を歩かば票は落ちている、つつましく固辞してきたつもりが、政務活動費の返還請求とか劣勢時にのみ何故か白羽の矢が立って過去には随分と損な役回りを演じてきた。
年度節目の登壇は団長だとかで、んな慣例は踏襲せずとも誰か名を上げるものは居らんのかとの提案も賛同得られず、今回「も」質問者に名を連ねることになった。いつしか歴代最多記録に迫る勢いにて記録更新どころかいっそ誰も打ち破れぬ金字塔でも...勿論、冗談です、ハイ。
代表質問は各自に割り振られた原稿を質問者と正副団長で「整えて」完成させる一大作品なのだけれども今回などは質問者が団長自身とあって独壇場に近い。個々により文章の癖もあれば力量の違いも顕著ゆえいかに整えるか。語尾や「てにをは」の訂正に留めるのが労少なく相手の恨みを買わぬ利口なやり方、されど、看板を背負っている以上、そんな稚拙な内容では世間様の嘲笑を浴びかねぬ訳で。団長なる役職を盾に遠慮なくメッタ斬りした結果、全百数頁の原稿が十頁以上も短縮されて...。
役所方の斥候役、なんていうと怒られちゃうんだけど、全庁的な調整役の役目を背負った総務企画局の「几帳面な」担当官Iさんが想定時間を届けて下さった。それが職務とは申せ、双方に粗相なきようと微に細にその気遣いには頭が下がる。この御仁なくして当日は迎えられん訳で担当官が握る時間配分が当日の議事進行の土台となるのだけれども目立つ残時間。時間に余裕があるゆえ答弁に対する「再」質問を手がけるようにとの指示も斬られた遺恨か笛吹けど踊らぬ面々。
量より中身、当初の原稿から質問自体を削った訳ではあるまいに、余計な修辞を「整えた」だけなのだから無駄を無くして早く終われば尚結構ではないかと開き直ってみても質問時間の配分を巡る国会の応酬が脳裏をよぎる。折角の時間を持て余すとは有権者を侮辱しとるとか民主主義の冒涜などとモノ好きな連中は騒ぎ立てるが、なら目一杯の原稿を見てみなされ、所詮はその程度のもんですよ。兎にも角にも相手を追い落とすことに執念を燃やし目立つことしか頭にない連中だから...。
さりとて、ヘンなメモが出回っては不都合この上なく。当日はゆっくり読むゆえこのへんの数字を多少修正して...と指示すればさすが天下の役人、水増しなどとは絶対に言わず尤もな理由を付けて再度持参いただいたものの上乗せ数分のみ。そりゃさすがにそうだよナ。意味不明瞭な前口上でよければ幾らでも...と休日返上(といってもそもそもに休日という概念がないのだけれども)にて原稿を執筆しているのだけれども無意味な水増しは仕事なく退庁時間を待っているようでどうも好かん。
そう、今回の代表質問の前文は...。
(平成30年2月25日/2413回)