孫娘

秋季リーグ戦とはいえども炎天下の開幕式。耐えかねぬのは私ばかりではないらしく詠んだ一句「舞ひ込みし蝉の珍客残暑かな」は季重ね也。
六年生には最後の大会、見事に選手宣誓の座を射止めたY君は息子の園児時代の級友であって進んだ小学校こそ別なれど坊主頭にまっ黒に日焼けした肌が夏の成果を物語る。そんな晴れ舞台を客席からじっと見守る二人は両親ならぬ祖父母。帰り際に声をかければソレだけを見に来たんだそうで。やっぱり子以上に孫は特別なものらしく。
さて、市への御意見箱「市長への手紙」は知られたところだけど、議会宛にも知る人ぞ知る御意見箱があって。そもそもにセンセイそのものが市の御意見番である上に寄せられる御意見なんてのは大半が苦情の類。匿名制の返信「なし」の制度設計とあってはまさに「聞きおく」目安箱の役割しか果たし得ず。が、そんな御意見箱に私に関する投稿が寄せられたとかで当局の事情聴取に応じることになった。
投稿によれば私が市の職員採用の口利きをしていて、年金「すら」(文中ママ)払っていない二十代女性Mさんを市に入社させるとかで、そんなことが世間的に許されていいのかと。何やら不正に加担する悪の権化が如く記された投稿を市の担当に見せられて白旗を上げた、というか釈明に追われた。
そもそもの発端は当人の祖父母の介護にまつわる相談から。認知症の症状が著しく悪化したことから施設入居への目途を立てて一件落着を見たのだけれども暫くぶりに連絡があって用件を聞けば娘の年金未納の督促が届いたとか。保険料の納付は当然の義務にてもみ消しなんてのは言語道断、一括返済が困難ならば分割でもいいから必ず納付するようにと御助言を申し上げつつも、何故にそんな状況に陥ったのかと聞けば、数年前に会社を退職して以降は劇団員を目指しつつアルバイトで生計を立てているとか。
とすれば仮にこれが済んでも早晩行き詰るのは明らかで夢を叶えたいとの心中は分らんでもないけど少なくとも派遣かパート位でなければ。そのへん親子なのだから諭せんものかと申し上げれば前回の退職理由が祖父母の介護、つまりは当人夫婦が共働きの状況にて孫娘にその役割を頼んだ、というか押しつけてしまった罪悪感から言いにくい御様子。で、あるならば生じた未納分位は親が立て替えてとフツーに思うのだけれどもそのへんの反応も鈍く...ほんと親子かね。
で、そんな状況を見かねて、つい「私が...」って。働く意欲を失っては堕落の一途を辿るのみであって、市の関係で就職斡旋もあれば産休育休の臨時雇用位はあるやもしれず。さすがに世帯分離した上で生活保護の申請をなんて言えんでしょうに。日中に居間でごろ寝されたのではかなわんとの家の事情も絡んでか退職後の再雇用の相談は日常茶飯事であるし、つい最近も都内在住の聴覚障害者の方から就職の相談を受けたばかり。
今や服務規律厳しく縁故採用は御法度なれど人材登録などは可能な訳で見知らぬ人物を登用するよりもセンセイの紹介のほうが身元保証人というか信頼が置けたりもするからかえって好都合だったりも。そんな依頼が寄せられるのも人気の証左ではないかと悪びれる様子なく。でも、なんでそんな「極秘」情報が他人から寄せられるのか。壁に耳あり障子に目あり、嫉妬心にはくれぐれも御用心を。
(平成30年8月31日/2450回)