白湯

証拠残るとあらば言葉選びは慎重に、余計なことは言わぬに限るも「市の魅力を存分に」と向けられて収録前の勢いそのままに勝手過ぎたる三十分。途中、地元イチオシの贔屓店を聞かれて土用丑の日とあらば迷うことなくその名を告げた。いつも並んでいて今夏は未だ好物にありつけず。ラジオ出演のひとコマ。
さて、夏休みこども議場見学会を終えた。昨年は定員に及ばずも今年は申込多数にて抽選。前回の記者会見の際に報道陣にハッパかけた成果かはたまた議長人気か、所管局に見解聞かば定員枠を減らしたことが原因ではないか、との分析にまぁそんなもんでしょうけど。実は議長にしてようやく公費で支給いただける名刺。特有の字の大きさに縦書き、左上に付された市の紋章に異論なきも右下にゆるキャラがいてそれが安っぽい、いや、威厳を損ねておらぬかとキャラの削除を口にしかけるも隣の一言に言わず思いとどまった。「親しみやすくていいじゃないか」と副議長。親しみやすい...か。
名は「およよん」、本市の市外局番に由来する命名だとか。伏魔殿が如くに近寄りがたい議会の印象を払拭すべく誕生したキャラにて市立川崎総合科学高校の生徒による作だとか。私にしてその程度なのだから他は推して知るべし。元々この手のものには懐疑的な連中少なくなく、これまでも慎重に事を進めてきたらしいのだけれどもこれを巷に広く知らしめるべく普及に一役をと請われて、そりゃ戦犯である前任者がその責を負うべきも後始末...否、旗振りを担当することになった。まずは各局に乱立するゆるキャラ、ミュートンにかきまる君は黙認の上、他は一掃して市の公式キャラとして全国のゆるキャラ選手権にでも。
が、その為には先立つものがなければ前には進まぬ、着ぐるみの予算確保を指示すれど示される難色。ただでさえ自己に甘く他人に厳しい面々がそんな勝手を許すはずもなく。というか、その存在すらあくまでも「議会かわさき」広報キャラクターなる身分でしかなく、ならばそこまでぜずと然るべき手続きにて「公式」への昇進を図ってはどうかと具申してみたものの、「多数の」賛同得られるかは微妙とか。評定の結果、まずは露出度を高めて知らず浸透を図り、気付きし時には未だそんな地位に甘んじていたのか、すぐにでも昇進をと敵方に言わしめるが最上。ということで好機とばかりこども議場見学会の案内役を務めていただいたのだけれどもこれが大変好評で「およよん」も大ウケとか。勿論、件のラジオ番組でも「大々的に」宣伝しておきましたし、着々と進む敵陣の包囲網。
そう夏休みの宿題といえば読書感想文。目下、鞄の中の一冊にある御仁の伝記があって、本人の腕白ぶりも然ることながら目立つ伴侶の良妻賢母ぶり。位人臣極めしその父君によれば、仕事なるものは「白湯を飲むが如くでなければならぬ」、つまりは、波瀾を起こさず、痕跡を留めず、当たり前に成るようにして成ったという具合に仕上げるべしと。白湯は水ではない、湯でもない、味は無いが胃の腑に優しく流れ込む飲み物にて薬の服用には恰好とあった。そうそう、白湯が如く...。で、肝心の「およよん」はこんな感じ。
(令和元年8月5日/2515回)