特典

名を告げれば思わぬ特典が付くやもしれぬ、中学生ともならばその位の知恵は働く訳で、聞かれし妻の返答は「恥の上塗りになるからやめなさい」とか。出さずと丁寧に対応いただいて、夏休みの宿題、市役所の取材を無事に終えたと聞いた。そう、特典といえば未だ趣味に記すには到らぬもその魅力知る宝塚歌劇団。本市初と思しき公演に席の融通を頼まれ。施設を貸すといえど規定の利用料を御負担いただいている以上は興行主の善意次第も地元開催の公演とあらばその位は何とか...「ならない」のだそうで。されど、そこはさすが役人、議長自らの鑑賞とあらば再交渉も辞さぬと聞いて、「い、いや、そこまでは...」と御返事申し上げた。
あの日の冒険を忘れし大人たちへ...との字幕。あれがなければ少しばかり成績も良かったかもしれんけどあの没頭した日々は無駄ではないはず。今さら画面に向き合うつもりもないけれど世代を越えて魅了し続けるあのゲームの隠れファンの一人。未だ衰えぬ人気に待望の映画化、ネット上では辛口批評が勝るというが、ディズニー映画に見るまでもなく、愛と友情、そして正義は勝つと不変の価値観を描けばハズレなく。何よりもあの音楽、ゲーム音楽といえど新たな分野を開拓した同氏の功績計り知れず。象牙の塔と揶揄される独特の世界にあって異色の経歴、音大を志すも必須のピアノに難ありて独学で学んだとか。ちなみに東京競馬場のファンファーレはこの方の監修。言わずと知れたすぎやまこういち氏。
ドラクエが二十年ならばこちらは二百年、世紀を越えて愛され続ける名曲の数々。世の三大とされるヴァイオリン協奏曲はベートーヴェンにブラームス、そしてメンデルスゾーンというのだけれどもこの一曲とて劣らず、前二人はそこに登場せずとも評価十分にて座を譲っても...。楽聖と並ぶは最高の栄誉にてそちらは外せぬ、されど、名手ヨアヒムが初演のブラームスの一曲とて捨てがたく、いっそ三とはいわず四大にでも。そんな名曲を披露せし楽団は今年初見参の仙台フィル。首都圏のオケが一堂に会する夏の祭典サマーミューザは本市が誇る極上のホールにて廉価で気軽にクラシックを愉しんでいただこうと企画された興行にて今年もいい曲目が並んだ。
新百合の出張公演は前述のメンデルスゾーンの協奏曲に私イチオシのブラームスの交響曲第一番。仙台フィルのチャイコフスキーはヴァイオリン協奏曲以外に交響曲第四番。五番こそ人気高くも四番も劣らぬ名曲。最終日のフィナーレを飾るは東京交響楽団によるシューマンのピアノ協奏曲に「革命」の異名有するショスタコービッチの交響曲第五番。そう、およそ三大などと申してもそこに甲乙あるものでもなく嗜好の話、三つ挙げよといわれればドラクエ以外に「クララ・シューマン愛の協奏曲」と「モーターサイクル・ダイアリーズ」か。前者はブラームス、後者はキューバ革命の英雄チェ・ゲバラの若き日を描いた作品。
目下、月組の演目がそちらと聞いた。
(令和元年8月15日/2517回)