場末

いかに注意払おうと相手あっての話。他人様の命預かる路線バスとあらば心して。ハンドルに見る運転手の性格。件数こそ少なくも乗客のケガ多きは予想に反して...。「雑」知らば乗客側に備える心理効果が働くとか。

世にエラい肩書が当人の人格を保証するものでもなく、出世の階段を駆け上がったものは決別も早い、いや、早かった、との分析。不測の事態の際に問われる真価。破綻後の敗戦処理を担いし面々は本社ならぬ「場末」の社員。号泣の会見が記憶に残る舞台裏、大手証券会社の瓦解を描いた一冊の題名はズバリ「しんがり」(清武英利著)。

戦において敗走の背後を襲うは圧倒的に有利、逆に士気高き相手の追撃を振り払うは死地に飛び込むようなもの、相応の覚悟なくば捨て駒になりかねず。そんな汚れ役を演じた面々の述懐に後悔なく、むしろ、再就職に好感を持って迎えられたと。

破綻の一因となりし簿外債務はバブルのツケ、それを放置した背景に社内の出世競争、とはよくある構図。会社が怪物化するは社長の独善以上に抵抗しない役員が原因と見かけた。問われるモノ申す議会の役割、そして、場末に隠れた人材の発掘こそ議長の役目...違うナ。

一部に「出先」などと揶揄されがちな区役所。元来の相性か不思議とそちらとの往来多く。転出後、数年のK課長が報告にて議長室を訪ねていただいた。進む木材利用、区役所の正面玄関ロビーフロアの木材化を図ったと。

それはさぞ来庁者の評判も。それ以上に庁内の職務意識の向上効果が大きいそうで、化粧上達の意欲見せる受付嬢、呼び方がよくないナ、案内係に天井照明を約束すれば、当意即妙、下からのライトアップも...とせがまれた、なんて誇張が過ぎてはおらぬか。

飼い猫だからアポは秘書経由。上から目線は厳に慎むべしと申し伝えてあるのだけれども客人とて相手が本人ならぬ秘書とあらば。豹変ぶり見るに彼らこそ情報源。秘書も些か緊張気味な客人はかつての上司、第二庁舎五階(いわゆる議会局)に身を置かれていて以降の動向は注視していたのだけれどもこの春に異動され、異動後に所管事務の報告と議長室を訪ねていただいた。その器量あらば向かうに敵なく、まさに人事課泣かせとは対極か。

そんな当人の遍歴にそちらの管理職も含まれるとか。うちの運転手が在籍とあらば推して知るべし、フロア内にあって冷やかな視線浴びがちな「チョーカン」こと庁舎管理課。担任が担任ならば生徒とて負けてはおらず、そう言わしめる雰囲気がないかと言えば否定は出来ぬ。それを聞いた本人が「私はあなた方のママではない」とヤンチャな部下を一喝したとの逸話残るAママは今も運転手たちにも恐れられ...いや、慕われておるらしく。

ハラスメントに干渉拒まれがちな昨今に危惧する管理職の資質。その為の研修などと申しても四十過ぎれば性格変わらず、肝心なのは対人関係。人動かすに人を嫌っては役職務まらず。雲の上の存在ながらも廊下のすれ違いざまに「元気か」と場末の運転手にも気さく声をかけていた評判上々のH部長は昇進されて。

均質的な職場にあって個性派の指揮官たちの活躍に期待している。

(令和2年6月30日/2579回)